位相空間と分離公理 コンパクトそして コホモロジー S. Kusafusa 位相空間 定義. Xを集合,B(X)を巾集合とする. 集合族O⊂B(X)がXの位相 (topology)とは, 次を満たすこと: (1) ∅, X ∈ O. (2) ∀O1, O2 ∈ O, O1 ∩ O2 ∈ O. (3) ∀Oλ (λ∈Λ),Uλ∈Λ Oλ ∈O. 集合 X と位相 O の組 (X, O) を 位相空間(topological space)と呼ぶ. O:= B(X). 離散位相 O:= B{∅, X} 密着位相 分離公理 分離公理とは、位相が弱すぎないための条件 定義 位相空間 (X, O) に対して, 次の条件を 分離公理 と呼ぶ: (T1) ∀x, y ∈ X (x ≠ y), ∃O ∈ O : x ∈ O, y ∉ O. (T2) ∀x, y ∈ X (x ≠ y), ∃O1, O2 ∈ O : x ∈ O1, y ∈ O2, O1 ∩ O2 = ∅. (T3) ∀F ∈ A, ∀x ∉ F , ∃O1, O2 ∈ O : x ∈ O1, F ⊂ O2, O1 ∩ O2 = ∅. (T4) ∀F1, F2 ∈ A (F1 ∩ F2 = ∅), ∃O1, O2 ∈ O : F1 ⊂ O1, F ⊂ O2, O1 ∩ O2 = ∅ (T2) 2 点を, 開集合で分離できる. (T3) 点と閉集合を, 開集合で分離できる. (T4) 2 つの閉集合を, 開集合で分離できる. 実数 R に対して、 (1) 標準的な位相と離散位相は, (T1), (T2), (T3), (T4) を全て満たす. (2) 密着位相と位相 {(a, +∞)} ∪ {∅,R} は, (T1), (T2), (T3), (T4) を全て満たさない. 位相空間 (X, O) に対して, (1) (X, O) が ハウスドルフ空間 であるとは, (T2) を満たすこと. (2) (X, O) が 正則空間 であるとは, (T1) と (T3) を満たすこと. (3) (X, O) が 正規空間 であるとは, (T1) と (T4) を満たすこと. コンパクトをイメージで理解 位相空間の部分集合について、その任意の開被覆が有限部分被覆を持つことを コンパクトという 開被覆とは、位相空間Xの部分集合Aと、Oλ これがAを覆うとき、{Oλ|λ∈J} をAの被覆という、開披服は無限にある AはXの コンパクト集合 コンパクト 有界かつ閉 CをRにおけるコンパクト集合とする。まず有界性を示す {(−n,n):n∈N}はCの開被覆となるので、有限個を選んでCを覆うことができる そのうち右端の最大のものを(−m,m)とすればCはこれに含まれ、上界mと下界−mを 持つ 次にCがRの閉集合であることを示す Cの補集合R−Cの任意の要素aをとる Cの各要素xに対してϵ(x)=|a−x|/2とすれば、ϵ(x)>0であり、(x−ϵ(x),x+ϵ(x))∩(a−ϵ (x),a+ϵ(x))=∅となる {(x−ϵ(x),x+ϵ(x)):x∈C}は集合Cの開被覆であるので、この中から有限個の(xi−ϵ(xi),xi+ ϵ(xi)) (i=1,2,…n)を適切に選んでVをその和集合とすればC⊂Vとなる い一方、ϵ(xi) (i=1,2,…n)の最小値をpとすればV∩(a−p,a+p)=∅、したがって (a−p,a+p)⊂R−C 以上によりR−CはRの開集合であるから、Cは閉集合である。Q.E.D. 有界かつ閉 コンパクト CはRにおいて有界かつ閉集合であるとする. 集合族UをCの開被覆とし、その有限個の要 素を選んでCを覆うことはできないと仮定して矛盾を導く. Cは有界であるので、C⊂[a,b]となる閉区間が存在する. [a,b]を半分に分けて[a,(a+b)/2], [(a+b)/2,b]を考え、Cとの共通部分をそれぞれCleft, CrightとすればC=Cleft ∪ Crightであ る. したがって、Cleft,Crightのうち少なくとも一方はUから有限個を選んで覆うことがで きない. 覆えない方を包含する閉区間を[a1,b1]とし同じ操作を繰り返すと、区間縮小列 [a,b]⊃[a1,b1]⊃⋯⊃[an,bn]⊃⋯ができ、どのnに対してもC ∩ [an,bn]は、Uの有限個で覆え ない. 一方、カントールの共通部分定理により、これらの区間のすべてに属する要素pが 存在する. (i)p∈Cのとき:p∈V∈Uなる開集合Vが存在するが、十分大きなnをとれば[an,bn]⊂Vとなる ようにすることができる. そのためには(p−ϵ,p+ϵ)⊂Vを満たすϵ>0をとり、[an,bn]の幅 (b−a)/2nがϵより小さくなるようにnをとればよい. (アルキメデス公理) (ii)p∉Cのとき:CはRの閉集合なのでR−Cは開集合であり、(i)と同様の方法で十分大きな nをとれば[an,bn]⊂R−Cとなるようにすることができる. (i)(ii)のいずれにせよ、C∩[an,bn]がUの有限個の要素で覆えないことに矛盾する. Q.E.D. 有限次元空間 Rm では、有界閉集合 コンパクト集合 無限次元空間では 有界閉集合 ⇐ コンパクト集合 のみ成立 (注意) Rm の距離は,通常のユークリッドノルム から決まる距離. (実は,ノルムのとり方によらずに,上のことが成り立つ.) (注意) Rm の部分集合 K が有界とは,ある実数 M > 0 が存在して,任意の x ∈ K に対し て、 ||x||2 ≤ M が成り立つことをいう. ・コンパクト集合上の連続関数は,最大値と最小値をもつ ← 最適化ができる ・コンパクト集合上の連続関数は,一様連続 ← 近似ができる 例えば, ・f (x) = x(1 − x) は,開区間 (0, 1) において最大値をもつ(f (1/2) = 1/4)が、最小値をも たない. ・f (x) = tan x は,開区間 (−π/2, π/2) において最大値も最小値ももたない. ・f (x) = 1/x は,開区間 (0, 1) において連続であるが一様連続でない. 点列によるコンパクト性の定義 (X, d): 距離空間, K: X の部分集合 定義(点列コンパクト): 集合 K が点列コンパクト K に含まれる任意の点列 (xn)n∈N が K の中の点に収束する部分列をもつ. 定義(有界):集合K が有界 あるM > 0とa ∈ K が存在して、任意のx ∈ K に 対して d(x, a) ≤ M が成り立つ. (注意) 有界の定義における a は、任意に選ぶことができる. すなわち、 ∃M > 0, ∃a∈K, ∀x∈K : d(x,a)≤M ∃M > 0, ∀a∈K, ∀x∈K : d(x,a)≤M が成り立つ. 証明:⇐ は明らか. は,ある a ∈ K について成り立つとき、別の b ∈ K を任意にとると、 任意のx ∈ K に対してd(x,b) ≤ d(x,a)+d(b,a) ≤ 2M となる. 基本群と被覆 X は弧状連結な位相空間として、基点 x0 ∈ X を固定する. 連続 写像γ : [0,1] → X でγ(0) = γ(1) = x0 を満たすものを、x0 を基点とする X のループ とよぶ. このようなループ全体に基点を固定するホモトピー による同値関係を入れ、同値類の 集合を π1(X, x0) で表す. x0 を基点とす る X のループ α, β に対して合成 α · β を、α · β(t) = α(2t) 0 ≤ t ≤ 1/2 、 β(2t−1) 1/2≤t≤1 で定義すると、π1(X, x0) に群構造を定めることがわかる. このようにし て定義された群 π1(X, x0) を X の基本群 (fundamental group) とよぶ. 一般に基本群が単位元のみからなる位相空間は、単連結 (simply connected) であると いう. また、G-被覆 π : X → X で、X~ が単連結である とき、π : X~ → X を普遍被覆 (universal covering) という. 被覆写像は、局所自明条件を満たす 直感的には、そのような写像は局所的には、パンケーキのスタックを開いた領域 U の上へ射影する コホモロジー 「何か似たようなことあり、共通するものがある」 コホモロジーの始まりは、混沌とした存在の中で aは、bに似ている aとbには共通なものがある どうでもいいところを無視すると、 aとbは本質的には同じだ コホモロジーは、割り算のこと 14を3で割ると、14=4・3+-2だが、この余り2がコホモロジーの元にあたる 核(kernel) 像(image) 数学体験教室 問い合わせ: galois@imetrics.co.jp 14
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