一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会 440 2015- 05 今月号の内容 記事1.◇連載◇ 貿易の実務と理論 (9) ……………………………………………………… 1 早稲田大学名誉教授 椿 弘次 記事2.第25回国連CEFACTフォーラム報告書……………………………………………… 11 記事3.平成26年度JASTPROセミナーにおける講演概要のご紹介 (3) … ………………… 24 記事4.AFACT e-ASIA賞募集へのお願い… ……………………………………………… 28 記事5.国連CEFACTからのお知らせ………………………………………………………… 30 記事6. 『ばいざういんどせいらー』 日本列島船の旅 〔船旅は国境を越えて③本格的クルーズ船への誘い (いざない) 前編〕 … ………… 33 =JASTPRO広報誌電子版のご案内= 裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。 J AS T P RO ◇連載◇ 記事1. 貿易の実務と理論 (9) 早稲田大学名誉教授 椿 弘次 1.貿易実務 (commercial practice) と契約法 貿易取引に携わる者で、いわゆる営業を中心に考える人は、最も重要な合意のみを、極めて簡略かつ目 の粗い文言でメモすることで良しとしたいのが普通であろう1。しかし、営業になじみが多くない法務担当者の 眼からすると、それは完全性や精緻さ(preciseness)からは程遠いもののように見える2。すなわち、現在で は対面の国際取引交渉は稀で、全ては電子的な通信や書面の交換により詳細に検討され、契約書面に取 りまとめるのが原則的実務だからである。特に、法律専門家がその作成に関与するため、商事慣習が破壊 された 3。また、 CIF 売買で説明されるように、売買契約の他に、その履行に関する分野である貨物海上保険、 個品運送ならびに傭船契約、荷為替手形決済などにおいて、標準約款、標準書式が整備されそれらを前 提に交渉するので、それらについての契約法的な理解なくして、貿易実務(互換的に国際商取引ともいう)を 的確に遂行できない状況にある。ここに、契約交渉における商務と法務の間のバランスと双方の担当者間の 協力問題が潜んでいる。 (昨年 12月号より連載が始まった) 『貿易と関税』における曽我しのぶ氏による「貿易 実務の仕組みと実践」と 『国際商事法務』における河村寛治教授による連載(vol.42 No.7(2014)から継続 中) 、 「国際契約法研修基礎講座」を読み合わせてみると、Devlin 判事の60 年以上前の論文による指摘が、 今も新鮮に響き、両者の接点の見つけ方こそが、国際商取引の要であるように思われる(本誌、No. 432に おける本連載の(1)の前半も参照されたい)。 この課題は、程度の差はあれ、世界的に共有されているのではないだろうか?アメリカで刊行されている 「Business Law」 (取引法)の教科書(例として、A. J ame s Barnes e t al. ,Law for Business 10th ed., McGraw・Hill/Irwin, 2009は、契約法、売買、代理、企業組織、財産、商業証券、信用・担保付き 取引、経済法などが各章を構成し、図版入りで1000 頁にならんとする大部のものである)では、会社法のよ うな事業組織の領域を含み、売買、決済などの商行為法、独占禁止法などの経済法が広く取り扱われ、商 学・経営系の学科で教授されているが、法務の専門家から見れば基礎の概説であり、それを学んだ者が法 務の専門家との間で基礎概念的に理解を整える程度のものに過ぎない。見方を変えれば、この程度の知識 がないと、営業担当の責任者が法務専門家をコントロールできませんよ、ということかもしれない。アメリカでは 訴訟の件数が膨大な数に上るが、9 割以上が判決まで進まず、調停、和解などで終わるとされるから、営 業と法務が共に経営判断(business judgement)を尊重する共通基盤があるともいえる。 したがって、単純な製品の売買の範囲を超える取引の場合には、課題の入り口で協業できても、それから 先は商務と法務は歴然とした分業体制になり部屋を異にする傾向が強まるだろう。日本では、これに対し、入 り口の段階から協業が十分行える事情には必ずしもないように思われる。取引は原理的に交換(bargain)の 1 著 名なイギリスの高等法院判事、P.Dev l i nは、かつて、次のように述べた。Few business men can be bothered to write elaborate contracts for themselves. The ordinary small tradesman sometimes has a set of conditions on the back of his notepaper( “Commercial Law and Practice“ in 14 Mod.L. Rev. 249, at p.252(1951)。企業人は、普通、詳細な契約 は煩わしいと考え、特に、規模大きくない商品取引業者はノートの裏にいくつかの条件をメモすることで可としていた、と言う。 2 I.Schwenzer et al., Global Sales and Contract Law , Oxford U. P., 2012, p.291. 以下、Global Salesと略す。 3 As per P. Devlin, J., ibid . —1— J AS T P RO 体系であり、市場を介して契約により取引を企業間で履行するものであるにもかかわらず、契約法の基本が 大学の学部レベルで十分に講じられてこず、他方、基本条件が数か条程度で十分とする対面取引の考え 方を国際商取引にも持ち込む実務が多かったからである。今も、かつての「貿易英語」以上に、 「国際商取 引」の基礎を教授する例はそれほど多くない 4。 金額的にも、技術的にも、複雑な商品を、反復・継続的に取引するのが常の時代に、このような事情は 改善されなければならない。幸いにして、国連国際動産売買条約(CISG,ウィーン売買条約)が、日本でも 2009 年 8月より、国内法の一部とされている。これを基に「国際商取引法」を商務と法務の連携として、国 際統一的契約法の理解を深めることが、いわゆる「グローバル」な時代の課題であろう5。 以上のような状況において、国際取引の交渉は、主として英語で行われている。前述のように、 「貿易英 語」、 「商業英語」などと称する科目で、 「貿易実務」と並列的に、交渉過程が説明されてきた。予備的交渉 である引き合い(inquiry)から、本交渉(offer、counter-offerのやり取り) 、契約メモの作成などが講じられ、 貿易実務の専門用語の理解の上に立った英語の通信文作成が契約の交渉の他に、契約を巡る報告、連 絡、協議などのために指導された。それから先は、現場での経験と上司による指導に委ねられた。 強調されたことは、5Cs (clarity(明確), correctness(正確), conciseness(簡潔), courtesy(礼節), consideration(配慮))の重要性であった。最後の配慮は、you–consideration(あるいは、Step into his shoes) とも言われ、相手の事情・立場を踏まえることと説かれた。これは、交渉のスタイルとしてconsensus building styleを良しとし、交渉はtrust building process であると意識すべきことを説くものである6。これら の要素は、ビジネス・コミュニケーションの行動指針として今も変わりなく、特に文書作成においては失われて いない。そして、英語を母語とする国は少なくないが、ここでいう英語はPax Britannica(英連邦体制下の 平和)の影響により、イギリス英語が手本であった 7。売買の他、運送、保険、金融などの諸分野において、 世界的に業界の標準となる標準約款や国際商品取引所を指導してきたのが、ロンドンの国際ビジネス界で あったから、一層、イギリス英語とコモン・ローの理解が重視された。 2.英文契約書と英語 貿易取引の交渉は、一般的に売買契約が出発点になる。売買契約の多くは契約の自由の幅が広いもの であるが、売買契約に関係している運送、保険、金融などの契約は標準約款やいわゆる附合契約性の強 いものであり、売買契約の履行に大きく影響する。したがって、それらの標準書式化された契約の条件につ いて理解した上で、売買契約の交渉を準備するのが普通である。その国際性の事実上の基準(de facto 4 とは言え、経営法務、商取引法、会社法などが商学・経営学系の学部で盛んに提供されている。代表例として、松枝迪夫著、 柏木 昇監修『国際取引法』 (三省堂) 、第二版、2006 年があり、契約法を中心に説明されている。隣国からの留学生を指導した 経験からも、上記本文と同様のことがこれらの国でも妥当するようである。 5 新堀 聰博士が『貿易と関税』 に2000 年代半ばから夙に説かれてきたところである。また、企業の法務部の拡充はかなり前から進 められてきている。遠藤 浩、林良平、水本浩監修『 現代契約法体系、第 8 及び第 9 巻(国際取引契約 1、2)』 ( 有斐閣) 、 1983,1985 年は画期的出版であったし、近年のものとして花木征一ほか『企業取引法の実務』 (商事法務) 、補訂版、2011 年、お よび田中信幸ほか『国際売買契約ハンドブック』 (有斐閣) 、1994 年、中村秀雄『実務英文国際契約』 (中央経済社) 、2000 年参照。 なお、則定隆男ほか編『ビジネスコミュニケーション 国際ビジネス分析の新しい視点』 (丸善) ,2010 年には、コミュニケーションとして の契約交渉が説明されている。 6 国際取引における信義の遵守を考慮すべきと定めるCISG Art.7 参照。 7 イギリスの最大・最良の輸出品は、英語とコモン・ロー (普通法) であるというのが俗諺である。 —2— J AS T P RO standard)をなしたのが、前述のとおり、英語とコモン・ローであった 8。 言語面では、英文の契約書が作成されることが多いから、英語の固有の性質に注意して、語句や文章 を起案し、理解する必要がある。この点について、二、三触れておきたい。国によっては、契約の言語を自 国語にし、それにより作成された契約書に優先的効力を認める例があるようだが 9、一般的な製品の取引に おいて、当事者の母語により別々の版の契約書を作成することは稀であろう。普通は、英語版を正本 (original version) とすることで十分である。仮に、言語学的に、或いは意味内容において、英語で十分 当事者の意思が表現できず、不都合であるならば、合意内容の英語による表現に鋭意努力すべきであろう。 第一は、英語は個別具体性を重んじ、抽象的なことばを嫌う傾向が見られる。その典型は、日本語で不 可抗力(force majeure)と簡潔かつ抽象的に表現していることを、具体的な事由を並列的にも列挙して、 包括的な語句で締めくくる不可抗力約款や免責約款に表れる。Terms and Conditionsのように類義語が 併記され(parallelism)て、その後にやや抽象的な語句でまとめられる。有名な例は、L loyd's 保険証券の 旧書式(S.G. Form)のPerils Clause(危険約款)で、pirates, roversと併記されていることと、火災をfire (火) と表示しburnt(炎上)を包含していることである。fireはその延長線上のburntを含むだろうが、burnt はfireを含まないと海上保険の判例法では解される。重要危険としての火災はburnt であり、一般には「火 =fire」が担保危険であり、ランプの火、たばこの火、暖炉の火などの如何を問わず、あるべき場所から逸脱 した火は担保危険になる。したがって、 「火保険」が厳密な表現になるはずである。イギリスの海上保険法の 担保責任原則は、列挙責任主義とされ、担保危険を具体的に挙げる。そして、語句毎に判例の裏付けが ある。日本的感覚では、海賊にviking, privateer(私掠船)は含まれ、corsair(北アフリカの海賊) も同様 であるが、海上保険証券には併記されていない 10。先のperilsもrisks, dangerと使い分けされている。これ には、歴史的背景や言葉の定義による厳密な差異化などが影響しているのだろう。平素から、こうした傾向 に注意して英語固有の言い回しに慣れるようにしなければならない。 第二に、この延長線において、船舶を場面に応じて個別に表示することに注目する。Vesselと言えば契 約品を運送している本船を指し、FOB vessel がその代表例である。場面により、ship(船舶)と言わず、 carrier(pure car carrierのように) 、boat(charter boat、liner boatのように)などと使い分ける。これに 類するかもしれないが、不可抗力(Act of God, Force Majeure)では厳密にすぎるとのことで、個別の事 情に応じてhardship(UNIDROIT Principle Art.6-2-1 以下参照), impracticability(UCC§2-615 参照) などの使い分けが行われる。また、別途、契約の暗黙の大前提の不成立(failure)による事情変更の原則 (frustration of contract)が適用され、免責される場合もある。言い換えれば、単語や語句の使用に日本 語以上に具体性が尊重され、その適用範囲の幅に差が設けられているように思われる。参考までに、語彙 や語句選択の重要性に関して、Lord Denning(the Master of Roles= 記録長官と訳されるが、事実上の 控訴院長官),The Discipline of Law , Butterworth, 1979, Chapter 1 Command of languageを参照さ れたい(下線は筆者挿入)。 第三に、事実と意見の区別を強く意識し、過去の記録、データと現在の状況、これからの推移について、 きちんと仕分けして表現する習慣が定着している英語的思考になれるとともに、相手方に対する陳述 8 イギリスの動産売買法(SGA) とその影響を受けたアメリカの統一売買法(USA) 、更には統一商法典(UCC)が、それらに関する 判例法とともに貿易実務で参照された。 9 Global Sales , p.296(26.18)参照。 10 塩野七生『ローマ亡き後の地中海世界 --- 海賊、そして海軍 巻1』新潮文庫、2014 年、pp.3−6 参照。 —3— J AS T P RO (statement, messageなど)を正確に性格付けして表現するよう心掛けることである。参考情報と事実、伝 聞と意見、約束と期待などの区別には特別に注意が払われる。客観性を重んじ、あるいは責任の存在がはっ きりしないことを示唆して、 (It is submitted that ―, It seems obvious that ― などのように)非人称表現や 受け身的な表現が多用されることにも注目すべきである。主張や反論は、これに対し能動態で表現し、 argue, claim, maintain, disputeなどの動詞の使い分けに注意が払われる。 こうした英語表現上の努力に応えてくれる道具は揃っている。法律用語辞典(Law Dictionary) 、法律 用 語・語 法 百 科(Corpus, Words and Phrases defined) 、 類 義 語 辞 典(Legal Thesaurus, 単 に Thesaurus)は、とても便利な参考書である。さらに、既に紹介したSchmitthoff The Law and Practice of International Trade 、Sweet & Maxwellのような10 版以上を重ねた名著を繰り返し参照すれば、英文契 約書の英語になじむことができる。 裁判官は書面を解釈するが、契約を作ったり修正したりせず、当事者の手書き、タイプ印字した約款をもっ とも重視し尊重するとイギリスで言われるのは、企業人が取引実務に通じているのみならず、言語運用力を 備えているとの前提があるからである。国際取引の契約に関与し、英文条項を起案する企業人は、取引実 務を取りまとめる英語力を磨く必要がある。 FOB, CIFの両用語に代表される国際商品売買条件と同業組合による商事仲裁による紛議の解決が、今 日でも国際売買契約の交渉に大きな影響を残していることは周知のとおりである。アメリカの政治経済上の影 響力もあって、アメリカ英語とモデル法である統一商法典(Uniform Commercial Code: UCC)を参照する ことの重要性が、国際売買契約交渉において目立ってきている。この点には、留意する必要がある。 3.貿易取引契約の交渉 貿易は、異なる国(または経済地域)に営業所を有する当事者間の売買契約で「国際売買」と定義される (CISG Art.1)。自ずと、隔地者間取引になり、契約の締結から履行までの間に、比較的時間差が大きい。 このため、物流危険、事情変動による履行上の危険変動、更には決済通貨が少なくとも一方当事者にとり 外貨となり、為替変動危険が伴う。この他に、国際取引であるがゆえに、不可抗力的事情の発生確率や 政治的危険が大きくなる。法域(jurisdiction)が異なる営業所間の取引であれば、契約に適用される法律 (準拠法、applicable law、governing law)の選択も取引交渉上の駆け引きの対象になる。 このため、貿易実務の主関心は、これらの危険を測定し管理して、なお、採算を有利にすることにある。 CIF 売買をモデルにして、貿易実務と目的市場、将来の相手方の探索などの事前の準備を整え、予備交渉 (「引き合い=Inquiry」と呼ばれ、取引に関する情報交換が主眼になる)に着手するのが、初めての相手方 との取引の場合の手順である。これを対面で行う場合には交流活動(exchange) と呼ばれ、見込みの取引 相手との間で親交を結ぶ信頼醸成が目的になる。予備交渉、交流、信用調査などは、相手方に対する法 律的な責任の有無を伴わない点で、本交渉と異なる。しかし、予備交渉において提供される情報や交流活 動は、本交渉の前提として取引情報の評価ならびに交渉当事者の信頼関係の形成に重要な意味を持つが、 参考情報に留まる。今日では交通・通信の発達、渡航の自由化などにより、対面的折衝はより容易になり、 交流活動の重要性も増し、それだけに通信による交渉の行方に大きな影響を持つ活動になっている。相手 方に逢い、その国の実情に直に接することは、予備交渉段階における重要な活動である(これが、globalと 言うことの意味の一つであろう)。 既に取引経験がある相手方との間では、この交流活動が、一般取引条件の協定として実績が残っている —4— J AS T P RO から、予備交渉を簡略化し、いきなり本交渉(bargain, negotiation)を開始できる。 本交渉は、約束の交換であり、約束は相手方の信頼を引き出し、それに反すると反則金などの制裁を受 ける点で、社交上の約束と区別される。これにより、当事者間で合意(agreement)が成立すると法的に強 制可能な契約となる。この要件の充足のためには、合意の範囲の充分性や合意の明確性が問われる。法 的には、書面化する要式性は合意の強制力に必要とされていない(CISG Art.11)。契約書面の果たす諸 機能を考えれば、書面化することは国際商取引において基本的なことである11。すなわち、契約書は合意 内容を確認し、紛議解決の方法を定め、契約履行の基準を示すものであり、このため、取引の交渉が慎重 に進められるべきことを示唆している。これを、外部証拠排除の原則(parole evidence rule, 後述参照)が 補強して、文書要件(documentary requirement)が強化されている12。 貿易実務の交渉前の予備的知識として、未だにFOB, CIFなどの主要な貿易条件(trade terms)を念 頭に考える人たちが多いことが示すように、この両条件にイギリスの国際売買契約に関する判例法と商事仲 裁が、契約の交渉に与えている大きな影響を無視できない 13。契約当事者としては、可能な限り当事者自治 に従い、法律的な理論に基づく論争より前に、見解の不一致や紛議を取引実務慣行(practice, usage)を 基に円満に(amicably)解決したい。業界の第三者による調停、仲裁の仕組みを通じて、自前のルール(性 質的には、implied terms で、個々の契約内容を補充する)を形成したいのが、商取引の当事者が重視す る契約の経済性(economy of contract in Global Sales , p.294(26.12)参照)の思考である。 前 号でも触れたように、いわゆる「 隔 地 者 間 取引」 (distance sale)の基 本 的な仕 組みが、前 記の FOB,CIFの2 条件に集約されているから、売買契約の個別の条件を検討するときに、この2 条件のいずれ を選択するかが、貿易取引業務の分担を左右し、交渉に臨む姿勢を支配する。これは、イギリス法であれ、 アメリカ法であれ、はたまたCI SGであれ、大差ないことである14。 契約書面を前にして、その内容が不完全である場合には、可能な限り合意を活かすべく、解釈、補充、 説明が行われる(favor contractus principleと呼ばれる)15。すなわち、合意は、法律・判例法、確立し た事実により内容が補充され、補強される(CISG Arts.8-9も同趣旨)。ましてや、取引経験があり、前例の 蓄積も十分な場合には、これらの一つを欠いても、実務上の慣例、先例などで補充して、 「契約を無効とす 11 UCC§2-201 参照。500ドル以上の売買契約は、書面化されていないと法的に強制ができないことを規定している。 12 ビジネスはtrust building process である。しかし、紛議や係争が生じると法(law) によるdistrust 前提の解決法になる。約款の良 し悪しは、distrust basis でどの程度規定するかに依るだろう。交渉論については、アメリカ流は二項対立的外交交渉をモデルにし ているようで、ビジネスにおけるtrust building process(CISG Art.7 参照) には必ずしもマッチしないであろう。ついでながら、交渉 論については、以下を参照した。G.Nierenburg, Fundamentals of Negotiating , Hawthorn Books, 1973、W.Ury, Getting Past No: Negotiating Your Way from Confrontation to Cooperation , Bantam Books, 1991( 斎藤精一郎邦訳『ハーバード流 “No” と言わせない交渉術』三笠書房、1992 年、R. Cialdini, Harnessing the Science of Persuasion , Harv.Bus.Rev., Vol.79 No.9, October 2001. 13 しかし、現在では、海上コンテナを利用する定期、小口の運送を想定する場合には、本来、FCA, CIPを売買条件とすべきである。 ましてや、契約品の引渡を国際複合運送により行うときに、FOB, CIFなどの海上売買用語の使用はもってのほかである。 14 書面重視の点にも関連している。すなわち、輸出管理は、書類審査(document check) 、現物検査 (goods check)の両建てで行 われる。このように、貿易は、物(商品) とお金の移動を書類と突き合わせて合致(compliance) を確認することで、安全性(security, 担保) を確保して行われてきた。電子情報に置き換わっても事情は同じで、原理的にやはり両者の合致が重視される。したがって、 全て口頭でも契約は成立すると言っても、国際商取引の現実は依然として文書主義である (紙の文書と電子文書で扱いが異なるとし ても)。その典型が CIF 売買でありdocumentary sales であった。 15 M.Bridge, The International Sale of Goods−Law and Practice , 2nd ed., Oxford.U.P., 2007, p.43(2.07) 参照(以下、Bridgeと 略す)。 —5— J AS T P RO るよりも、合理的に可能な補充により、契約を有効に活かすことが望ましい」とするこの原則の適用が容易に なる。これに業界団体が発達し、そうした団体内で商事仲裁、調停が盛んに行われていると、実務慣行の 安定と信頼性が評価され、それが契約内容を補充したり、説明することになる16。 当事者の意思が正確に表現されて曖昧さがなく、 (取引の採算上も契約履行の成否の基準としても)重要 な条件が合意内容に備わっていなければならない。広く 「基本条件」、 「個別交渉事項=individually negotiated term」などと称される明 示の条 件の一つを欠いても、それを補 充する法 規(default rule, supplementary provision)や確立した取引慣行が明確に指定されていないときは、いわゆる契約は強制で きないものとされる。品質、価格、数量、納期、決済などがこの「基本条件」に当たるものとして講じられて きた 17。CIP(CIF)売買では、これらをさらに具体化して、出荷地(place of shipment)あるいは引渡場所 (place of delivery) として付記し、提供書類を決済条件に関連して、具体的に列記する例が多い。 4.契約の理解と解釈 国 際 商 取 引に臨む基 本 方 針ならびに標 準 実 務をまとめたものとして、 「一般取引条件協定書」 (Agreement on General Terms and Conditions)あるいは基本条件書を、精粗の差があっても、多くの 企業は自前で作成している。これは国際契約における文書主義に対応するためでもあるが、業務担当者の 業務管理の心得としてもとても重要なものである。平生から貿易取引に携わる企業は、自社の標準取引約款 を他社のものなどと比較して、業務を点検・評価するようにしなければならない。それが法務と商務の連携を 強めることになり、より安全な取引につながる18。加えて、国際商品の貿易の場合などでは、業界団体で標 準約款(standard clauses, or standard form of contract)が整っていて、一般取引条件協定書と共に、 いわば私的立法(private legislation)のようになっている。換言すれば、準拠法が一国内の取引に関する 一般的な原則であり、個々の契約条項に対する補充的な機能を果たしているのに対し、取引をより直接的か 16 ロンドンにおける商事仲裁に比して、商事仲裁に代表される裁判外紛争処理の制度が十分利活用されず、また、利用されても仲裁 判断などが英文で発表されていない点などが日本における国際商事慣行の形成にとり弱みとなっている。また、アメリカにおける訴訟 件数の多さに比して、イギリスでは、商事仲裁(commercial arbitration) と商事裁判(commercial court) の合理的な分担が、相 対的にイギリスの訴訟件数を抑え、かつ、商事判決の国際的な参照価値を高めていることに注目したい。商事仲裁は、仲裁人が取 引実務について専門家の立場から検討し、事実関係の整理に努め、重要な法的な判断すなわち文書の法的解釈が必要なときは、 合意事実記載書(The Facts Stated) を作成して論点を提示し、裁判所の判断を求める手続きを踏む。裁判所は、十分説明された 事実に基づき、商事契約書の解釈に集中する。Chi t ty on Contracts Vol.1 General Principles, 30th ed.(by H.G.Beale), Sweet and Maxwell, 2008,para. 12-041 以下参照。この叡智に学ぶためにも、日本で商事仲裁や調停を盛んにして、global usageの形成に貢献すべきだろう。 17 基本的条件を基準にとっても、契約の種類や性質は千差万別である。一般的には、一回限りのさほど高額でない製品の単発的契約 (spot contract) と反復継続的な長期契約(long term contract) に分類される。これまで、日本では前者を中心に独立対等当事者 間取引を前提に「貿易実務」 として説明されてきた。今日では、企業間関係の安定、長期化、緊密化により、長期契約が増え、親 子会社間取引が主流を占めるようになり、更には事業契約(business contract)が盛んになって多額の投資を伴う企業間連携が目 立っている。したがって、取引の基本的枠組みを一般的に定める一般取引条件協定書は数ページにわたる例も少なくなく、いわゆる 基本条件はこの協定書による個別の履行についての協定やメモに留まる例も普通になっている。長期契約であり、高額の事業契約 を伴うときには、自ずと法務的危機管理思考が強くなり、当事者双方が契約条項毎に法務専門家により点検確認する。したがって、 いわゆる 「書式の争い=battle of forms」が生じる可能性は極めて低い。同時に、取引関係の維持が重視されるから、短期の「貿 易実務的商務」の枠を超えることが増えてくる (契約が関係維持重視のrelational contractになるという)。しかしながら、貿易が国 際間の商品の移動とそれに伴う決済、通関などの業務(商流、物流、決済、通関) を必要としているので、定期運送ベースの貿易 実務と傭船契約による貿易実務の基本を理解することの重要性は衰えていないし、短期契約ベースの契約法の理解が根本にある。 18 定型の基本条件書を用いた取引の交渉において、契約成立に係る 「書式の争い」に巻き込まれることには注意する。 —6— J AS T P RO つ具体的に規律するのが、この私的立法で、取引交渉の費用と時間を抑える契約の経済性を図っている。 これを踏まえて、取引交渉に先立って、これらを十分点検し、理解しておくことが肝要である。なぜなら、標 準約款上の特定の語句やIncotermsの定型取引条件(trade terms)は、判例法により確定した意味 (settled meaning)が既に与えられていることが多い。取引交渉の任に当たる者は、これを無視したり、安 易に修正できない 19。 交渉の準備に関して先に触れたように、当事者が明示の文書で示し(または口頭で述べたこと。しかし、 これも確認メモなどにして文書化しておくことが紛争防止に有益である)たことを中心に、契約内容(terms and conditions)が定まり、選択された任意法規(国際条約、国内法、国際モデル法)などにより補充される。 これに加えて、援用(incorporation)により契約へ摂取される規則や確立した取引慣行などが、契約内容 の一部になる。 それらを全体として総合して、 「契約の解釈」として説明される。前述したところ明らかなように、解釈 (interpretation, construction)の他に補充(supplementation)が含まれるが、紛議の解決においては、 解釈、補充ともに裁判所が担当する20。 裁判所は、広く承認されている契約の自由の原則により、当事者の意思を最大限尊重する。この原則に 従い、当事者の共通の意思を発見するために、当事者が特に交渉して起案し、合意に至った明示の内容 (express terms)のうち、特約事項、個別タイプ印字条項、特に挿入され印刷約款を修正する付箋(rider) などが、優先的効力を認められる。次いで、一般的な印刷約款が尊重される。矛盾するような条項が見ら れるときは、契約の効力を承認すると思われる条項を活かす(favor contractus principle)。条項が曖昧 で二様に解釈できるときは、平易な意味に解する方を選択する。また、併せて作成者に不利になるよう解釈 する(contra proferentem interpretation)。列挙主義がとられ、最後にany other eventなどの包括的 表現がされているときは、 「それ以前に列挙された事項と同種のものをさすと解するべきである」 (同種制限の 原則、ejusdem generis principleと呼ぶ)。 明示の条項(express terms)は黙示の条項(implied terms)に優先する。これに類するものとして、合 意内容を網羅的にまとめた契約書が作成されたときは、契約書外の事情を用いて契約内容を、補充、修正、 変更してはならないという趣旨の前述の「外部証拠排除の原則」がある。この原則を宣明するとともに、契約 書に記載されていることはすべての合意を統合する完全かつ最終的な合意であると宣言する約款は「完全 合意条項」 (Enire(and Final)Agreement Clause、Mergerand Entire Clause, Complete Integration Clause) と称される。この約款の言い回しが強くなり過ぎると「補充」が制限され、一般取引条件協定書を用 いる契約の経済性がそがれることもある。完全合意条項は、契約書の解釈において、交渉の経緯などの過 程を検討から外すようにするものであると主張される。契約の中味(content)についてはその通りだろうが、 契約書に用いられた用語の意味の確定については、この条項は大きな意味を持たない 21。 明示の合意条項、反復的履行に伴い承認されている履行の過程(course of performance), 取引の過 19 例えば、 “Ready to be delivered” の意味については、Cie Commerciale Sucres et Denrees v. Czarnikow Ltd.(The Naxos) [1990] 1WLR 1337, HL で、CIF 売買に関する売買当事者の義務と提供書類に関しては、Biddell Bros. v. Clemens(E)Horst Co.[1911] 1 K.B.534, [1912] A.C.18, HL で、それぞれ確定した。 20 これに関連して、interpretation and constructionとsupplementationを区別して説明する考え方があるが、実務上は重要な差 異はない (Global Sales, p.292(26.03 参照)。 21 Bridge, pp.44-45(Sec.2.10)参照。UCC§2-202および§2-208(1) も同旨。 —7— J AS T P RO 程(course of dealing), 確立した取引慣行(usage)などは、可能な限り互いに矛盾なく合理的なものとして 調和的に解釈されるべきである。これは、アメリカのUCCの考え方だが、 UCC§2-208(3) 、 UCC§1-303(e) などは、国際的に広く承認されるだろう。それぞれの用語の定義と優先順位については、UCC§1-303に 規定されている。また、CISG Art.8(3)および Art.9もほぼ同様の趣旨を定める。矛盾があるときで、調和 的解釈が成り立たないときは、当然、明示の条項が優先的効力を持ち、履行の過程が取引の過程や取引 慣行に優先するとされる22。 参考までに、UCC§1-303の要点を示すと、以下のとおりである。 (a)Course of performanceは、当事者の合意が反復的履行を伴う場合の当事者間の一連の行為を意 味し、履行の性質(例えば、数量に過不足があること)を知りながら、その機会があっても異議を唱え ず、当該履行を黙認もしくは承認している場合に生じる「履行の過程」を意味する。これは、後述の waiver clauseに関する。 (b)Course of dealingは、特定の取引の当事者間において、以前の取引に関する一連の行為であって、 その表現や行為の解釈に共通の理解の基盤をなすものと見なすことが公平なものを言う。日本語でいう 「過去の例」に相当するものをいう。 (c)Usage of tradeは、当該取引において遵守されることが期待されるほどにある場所や業界において通 常遵守される取引実務や取引方法を意味する。その存在と適用範囲は事実問題として証明されるが、 それが業界のコードや記録にまとめられているときは、その解釈は法律問題として扱われる。具体的に は、Incoterms がこれに該当する。 以上のいずれも、当事者の合意の意味を確定するに当たり重要なもの(relevant)であり、合意の中の特 定の用語(terms)に特殊の意味を与える場合や合意の内容(terms)を補充したり制限することがある。こ れらが調和的に解釈できないときは、契約の明示の内容が最優先され、取引慣行が最も劣後する。 (a) は(b) に、 (b)は(c)にそれぞれ優先する効力が認められる。 なお、取引コミュニケーション上は、 (b)および(c)は、契約成立以前の背景の事情並びに環境であり、 (a) は契約成立後の事実行為であって、権利放棄(waiver)に関連するものである23。したがって、分別ある第 三者の概念に主として(b)および(c)は含まれるが、 (a)についてはやや微妙であろう。 22 Bridge, pp.41-42は、条項間の調和的解釈を説いている (2.04) が、UCC§2-208 が規定するような問題は、 「事実関係の錯綜的連 関」 として説明し、履行の過程をそこから除外している。そして、商事契約における交渉の過程で、当事者が交わしたメッセージは 契約解釈の重要な資料になり、契約の商事目的、取引の契機となる事情、背景、前後関係(市場の状況を含む文脈) などに注意し て契約は解釈される。用いられた言語学的な検討よりも、事実関係の錯綜の中で契約書の中味を考えることが重要である。Bridge、 pp.44-45(2.10) ではfactual matrixと呼び、状況分析と判断(situation sense) が重要であることを説いている。 23 契約書は、作成当時における中身の確定であり、その証拠である。そして、その後の当事者の行為は、その契約書に基づいてなさ れることで、契約は安定するし、そうせねばならない。時に、契約書と異なる扱いについて、これに対する異議がなく追認がなされ繰 り返されると、契約内容の事後的修正(rectification) が成立することがある (UCC§2-208(1)参照)。その場合、当事者が今後は それによるとの共通の理解を書面で確認しておくことが紛議の防止に有効である (イギリス法では、約因の法理により対価を支払って 契約の修正・変更として取り扱う。UCC§2-209は、この場合でも約因を必要としないと規定している。この点では、イギリスの方が 厳格である)。そうでないと、事後的な行動についての単なる一方的な解釈を許すことになり、契約解釈が不安定になる。Waiver(権 利放棄条項) が挿入されるのは、このためでもある (「権利の上に眠るものは保護されない」 との法諺により、契約書の規定と異なる事 実行為の積み重ねがあり、相手方の期待に反して、突如契約書どおりに履行せよと主張できなくなることはありうる (約束による禁反言、 promissory estoppel) と呼ぶ。 —8— J AS T P RO 5.小括 CISGの重要性は変わらないが、取引実務の実態において、従来の売買契約に関する各国の基本原則 と大きく異なる点は少なく、取引担当者は、国際商取引の慣性の力もあって、紛議や見解の不一致の解決を、 準法律的な商事仲裁などの訴訟外紛争処理方法(ADR)に求めることが普通である。その場合、訴訟は、 その後にとられる紛争解決方法である。そして、そのADRとしての調停、商事仲裁が、英米法を契約の 準拠法とし、ロンドン、ニューヨークなどで使用される標準約款の力もあって、CI SGの出現に、少なくとも日本 では期待されるほどに影響を受けていないようである24。 CISGは、解釈の基準を、当事者の一方が述べたこと (statement)は、同様の事情において相手方当 事者と同種の分別ある第三者(a reasonable third person)が理解したであろうところに従って解釈すべき であるとする客観主義に立っている(Art.8(2), Global Sales では、これをthe commonsense commercial approachと呼んでいる(p.298(26.22)参照)。例えば、日本の輸出者が、外国の輸入者に対して述べたこ とは、該当の業 界(the trade)においてその背 景の事 情を含めて良く理 解している当事 者(an wellinformed and experienced person)が理解したであろう意味に解釈すべきであるということである。すなわ ち、当該業界で経験を積み、取引に関する事情や経緯に通じている者の理解が解釈の基準にとられる。し たがって、交渉担当者も、業界の事情に通じた分別ある第三者と同様に、個々の取引に関して常識的とさ れる知識、経験をもって判断できる者でなければならない。そして、交渉権限の範囲と配分の問題としても参 考にしておくべきである。そうした第三者は、国際売買においては、依然として、CIF 売買 , FOB 売買など の書類売買性の取引慣習を形成してきた英米法的な思考に依存している。とりわけ、ロンドンの国際商事に 関する売買、金融、貨物海上保険、海運などに関する業者団体の活動と、団体メンバー間の紛議、論争 の解決を引き受けている商事仲裁人や商事法の専門家の活動が盛んなことが、 「分別ある第三当事者」を輩 出する要因でもある。 これが、国際商取引を実践し、交渉するときに、英米契約法とそれに基づく貿易実務モデル(CIF 売買、 FOB 売買、CIP 売買、FCA 売買など)を参考の枠組みにする要因である。 日本法を契約の準拠法にすると定めても、それがどの程度生きるかは、自信を持って言えないだろう。海 上保険のクレーム処理は、イギリス法準拠であり、国際海上物品運送は、英米法の影響が強く、傭船契約 では特にその傾向が強い。日本法が、名実ともに広く世界に知られていれば別だが、既に、英文の標準約 款などが存在し、広く採択されている。そこではロンドン、ニューヨーク州法が準拠法や仲裁地として選択さ れることが多い。さらには、国際商事に関する訴訟、仲裁、英文の判例集などの影響が強く、国際ビジネス 言語が英語であることもあって、英語とコモン・ローの世界から抜け出すことは容易でない。 ただし、英米的思考で契約の条文に拘りすぎてもいけないことがある。その昔、台湾電力が発電機をイタ リアの企業から購入した。しかし、故障が生じたとき、電力会社が補修を依頼したのに対して、イタリア側か らは技術者の派遣経費の負担や見積もり、滞在中のホテルのサービスなどに関して、長々と質問したり強く要 望を述べてきた。しびれを切らした電力会社は、同型の発電機を製造している日本企業に協力を求めてきた。 日本企業は、迅速に対応して速やかに補修を完了し技術者は帰国した。帰国後に、経費の精算が行われ、 更に、新規の商談が日本企業に持ち込まれた。 24 久 保田 隆「国際取引法研究の最前線 --- 第 31 回 国際取引法の教科内容の改善に向けて」 『 国際商事法務 』Vol.43, No.3, pp.404-405(2015) および GAFTA(飼料・穀物取引協会)標準約款 No.100, 特にClause 28 参照。なお、Incoterms がイギリスの 貿易慣習に及ぼす僅かな影響に付き、Bridge, p.8 fn.24 参照。 —9— J AS T P RO 契約条項の法的な交渉とビジネスのセンスは、このようにずれることがある。法務と商務のバランスの必要 性がここに見られると思う。 次回は、本交渉における課題を取り上げてみたい。 <補正の願い> 前号(No.439)の注記 13について、本文中にその注記記号が脱落していました。 同号 9 ページ本文の下から14 行目冒頭、 「― まれる13。」のように補正をお願いします。 <お詫びと訂正> 2月号(No.437) の5 頁、注記11について、論文執筆者名を 「黒沢健一郎」 と表記しましたが、正確には 「黒澤謙一郎」の誤りでございます。お詫びして訂正いたします。 以上 — 10 — J AS T P RO 記事2. 第25回国連CEFACTフォーラム報告書 2015 年 4月20(月) ~ 24日 (金) 国連欧州本部 ジュネーブ・スイス (オープニングセッションの会場風景) 第 23 回 国連 CEFACT フォーラム 1. 会議の概要 1.1 会 期 2015 年 4月20日 (月) ~ 24日 (金) 1.2 会議場 国連欧州本部(ジュネーブ・スイス) 1.3 参加者 <全体参加者数:約 130 名> 今次会合参加者は、前回フォーラム(2014 年 11月ニューデリー・インド)の200 名と比較し、また、前々 回(2013 年 4月ジュネーブ・スイス)の参加者 152 名と比較し、いずれも減少となりました。 <参加国数:30 ヶ国> 英国、アイルランド、スペイン、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギー、デンマーク、イタリア、スイス、 … オーストリア、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、ルーマニア、ベラルーシ、ウクライナ、クロアチア、 アゼルバイジャン、米国、オーストラリア、セネガル、ナイジェリア、モロッコ、ガンビア、日本、タイ、韓国、 中国、インド (国連欧州本部での開催となる第 23 回フォーラムとの比較において参加国は1 か国増となりました。) <国際組織> GS1、WCO、IATA、ISO、WTO、World Bank、ITC 等 が、また、その 他 国 連 の 組 織として ECE、UNCTAD がそれぞれ参加しました。 — 11 — J AS T P RO 1.4 ビューロメンバーの参加 国連 CEFACTビューロ議長並びに各企画開発分野(以下 PDA)を総括する副議長 5 名全員が出席 しました。 1.5 日本からの参加者 以下 6 名が参加しました。 (前回フォーラム参加者は4 名) ○菅又久直氏(国連 CEFACT日本委員会運営委員会委員長・ サプライチェーン情報基盤研究会(以下 SIPS)) ○鈴木耀夫氏(国連 CEFACT 標準促進委員会委員・NPO 法人観光情報流通機構専務理事) ○遠城秀和氏(国連 CEFACT 標準促進委員会委員・NTTデータシステム技術株式会社) ○島野繁弘氏(国連 CEFACT日本委員会委員・NEC 株式会社) ○阪口信吾氏(国連 CEFACT 標準促進委員会委員・NECソリューションイノベーター株式会社) ○石垣 充(JASTPRO 業務部業務1部長) 2.今回のフォーラムにおけるトピック 【トピック1 】 『 新ビューロ議長の下での初めて開催されるフォーラム。その新たな取り組み』 第 21 回国連 CEFACT 総会(2015 年 2月)においてビューロ議長としてLance Thompson 氏が選任され たことは既報のとおりです(米国、任期 3 年)。 また、同氏は第 20 回国連 CEFACT 総会(2014 年 4月)において、ビューロ副議長 6 名のうちの一人とし て選任されました。2015 年 3月、同氏の議長昇格に伴い、国連 CEFACTの運営においては当面 5 名の副 議長体制にて進めるとのビューロ方針が公表されました。 — 12 — J AS T P RO 全体の分野構成は上図のとおりです。全体を3 つの分野に区分し、まず左サイドの「Recommendation Area」 (標準類の開発・維持) 、次いで中央の「Standards Area」 (標準類の開発・維持) 、更に右サイド の「Support Area」 (支援・普及の開発・維持) として構成されております。 その中にあってこれまでの、①国際貿易手続(ITP) 、②サプライチェーン、③行政(Regulatory) 、④産 業 別 特 化(Sectoral) 、 ⑤ 手 法・技 術 組 織(Methodology and Technology)の5 つの企 画 開 発 分 野 (PDA)及びそれぞれの分野を担当する副議長は一切変更しておりません。一方でこれまでの『ビューロプロ グラムサポート』グループの機能すべてが⑤手法・技術 PDAの中に包含され、新たに『ビューロサポート (Bureau Support)』 として、 『 国連 CEFACT 戦略のフレームワーク』において掲げられた、①コミュニケーショ ン促進、②外部標準化組織との連携窓口の2 つのタスクに加え、③各プロジェクトの進捗を総括するタスク、 ④アジア地域及びアフリカ地域とのコーディネーションのタスクを追加し、これまで同様にKhan 氏(インド国籍) Igwe 氏(ナイジェリア国籍)に委ねることとしています。将来的には他の地域(ラテンアメリカ、中東等)をも含 めた連携を図るとともに、⑤普及啓蒙を新議長が担当するタスクと、合計 5 つのタスクを設定しています。 前議長であったSturt Feder 氏でのビューロ体制下では、Harm Jan 副議長(オランダ)が番頭格として 他の5 名の副議長に対しコーディネーションを行うといった傾向が見受けられましたが、新たな体制下では議 長が直接に各副議長に対して、その担当範囲の進捗を確認する方式へと変更したものと考えられます。 フォーラム開催期間中、毎夕開催されるビューロと各分野の専門家との合同会議(オープンビューロ)にお いては、進行中のプロジェクトに係る進捗状況の確認に加え、その進捗の実態が停滞ないし担当リーダの不 在等のプロジェクトの棚卸と当該プロジェクトに係る今後の方策について、議長が担当副議長に個別に指示 を与える、といった具体的、かつ透明性のある活動を意識した運用方針が示されているとの好印象が得られ ました。 これまではプロジェクトリーダ毎にその運用にむらがあったプロジェクト進捗状況の公式 Website への公表に ついても、改めて議長よりこれを徹底するように指示していました。これは議長自身が、副議長時代に担当し プロジェクトの実施方針を全てのプロジェクトに励行させるということです(プロジェクトの状況は以下のように公 示されます。)。 — 13 — J AS T P RO 【トピック2】 フォーラムの期間中に並行して、以下の2つの会合が開催されました。 ①『 輸送と貿易における世界全体での円滑化パートナーシップ(Global Facilitation Partnership in Transportation and Trade)』 (2015 年 4月22日(水)) 本会合は例年、欧州経済委員会(UNECE)と世界銀行(WB)が共催しているもので今年度は 『WTO 貿易円滑化協定(TFA)の導入支援における民間セクターの役割』 と題して開催されました。 ② UN/LOCODE Conference(2015 年 4月24日(金)) UN/LOCODEの利用とコード管理の運営要領について、UNECE 主催で初めて開催されました。 両会合とも、国際標準化団体、民間、行政等からの関係者に、今回のフォーラムに参加している専門 家も加わり、その利用や運用方法について内容の濃いプレゼンテーションや質疑等が行われました。 3.各企画開発分野 (PDA) の活動状況 5 つのPDAの活動状況についてご報告します。 なお、本フォーラムにおけるプレゼンテーションの資料等は以下のURL から参照できます。 http://www.unece.org/index.php?id=36194#/ 3.1 PDA #1 『国際貿易手続き (ITP)』 3.1.1 担当副議長 : Estelle Igwe 氏(ナイジェリア) 3.1.2 ドメインの分割 昨年、輸送とロジスティクスドメインがサプライチェーンPDAに移行して以降、傘下のドメインは国際 貿易手続ドメイン(ITPD)のみでしたが、ビューロの方針にて以下の4 つのドメインに分割されることとな り、今回はその職能(Terms of Reference)について専門家の間で整理されました。 ①国際貿易手続きドメイン(ITPD) ②シングルウィンドウドメイン ③ WTO 貿易円滑化協定(TFA)関連のFocal Pointドメイン ④貿易円滑化導入ガイド(TFIG) ドメイン 今後は本ドラフトをビューロに提出し承認を得る予定であり、各ドメインの運営において適切なリーダを 確保することが課題です。 3.1.3 継続作業中の案件: 『勧告第 4 号およびガイドライン改訂 (The revised Recommendation on National Trade Facilitation Bodies and its Guideline)』 勧告第 4 号『各国貿易円滑化機関』は、初版が 1974 年に発行されたものでその内容は、貿易手続 き簡易化のため各国政府に貿易円滑化機関の設置を呼び掛けたものです。 2001 年に発行された勧告第 4 号の第 3 版及び 2000 年に発行されたガイドラインは、発行から時間も 経過していること、その間に於いて2013 年 11月にはWTOのバリ閣僚会議で合意され、その後 2014 年 11月のWTO 一般理事会にて採択された「貿易円滑化協定」 (以下「TFA」)を反映する必要性や、 既に複数国で貿易円滑化関連組織が設立され運営されていること、更に地域レベルでの貿易円滑化 の相互協力に係るアプローチ等を考慮して貿易円滑化機関についての定義も更に明確化する必要があ — 14 — J AS T P RO るとの認識のもと、新規プロジェクトとして立ち上げられました。今次フォーラムにて審議の結果、パブリッ クレビューに付すための最終ドラフトが合意されました(本件は2015 年 4月30日付にて60日間のパブリック レビューを行うことが国連 CEFACTのWebsiteに公示されました。)。 3.1.4 継続作業中の案件: 『新規勧告 貿易円滑化における官民パートナーシップ (The Recommendation on Public Private Partnership(以下 PPP) in Trade Facilitation)』 この勧告の趣旨は、古典的なPPPのモデルを貿易円滑化対応や、ファイナンスに関連した様々なリス クに適用するというものです。WTOのTFA 導入に於けるファイナンシングについては、特に開発途上 国において重要となってきています。 本勧告案について今次フォーラムにて審議の結果、パブリックレビューに付すための最終ドラフトが合 意されました(本件は2015 年 4月30日付にて60日間のパブリックレビューを行うことが国連 CEFACTの Websiteに公示されました。)。 3.1.5 継続作業中の案件: 『勧告第 36 号 シングルウィンドウの相互運用性確立』 シングルウィンドウについては2005 年から2010 年の間に、 ①勧告第 33 号 「シングルウィンドウの設置に関する勧告とガイドライン」 ②勧告第 34 号 「シングルウィンドウのデータ整合化に関する勧告とガイドライン」 ③勧告第 35 号 「国際貿易におけるシングルウィンドウのための法的枠組み」 の3 件の勧告が公開され、多くの国々におけるシングルウィンドウの推進を促してきました。続く本勧告第 36 号は、各国でそれぞれのニーズに即して開発されてきたシングルウィンドウについて、国を跨り相互に 接続する相互運用性の確立を目指すものです。 プロジェクトに参加する専門家は、以下 4 つのタスクに分かれそれぞれ検討を進めました。 ・ビジネスニーズ ・意味情報(Semantics)の相互運用性 ・ガバナンス環境 ・リーガル環境 更に2015 年 2月18 ~ 19日の間に『シングルウィンドウ相互運用性に関するラウンドテーブル』と題する ワークショップを開催しました。多様な業界や標準化団体の多数の参加を得て、2日間にわたり精力的な 議論が行われ、その結果以下の二つの方針が出されました。 (1)相互運用性を扱う本勧告第 36 号ではいわゆるG to G である法令関係情報(Regulatory)交換 に対象を限定する。 したがって勧告第 36 号のタイトルもこれまでの『シングルウィンドウの相互運用性』ではなくもっと 内容を明確に示すこととなりました(案例として『 貿易法令システムの国境を跨る相互運用性 (Cross Border Interoperability of Trade Regulatory)』をタイトルないしサブタイトルとする。)。 (2)いわゆるB to Gおよび B to Bを対象とする別個の相互運用性に関する勧告を開発する(仮の番 号として勧告第 37 号とする)。 今次フォーラムでは、上記のワークショップにおける方向性を踏まえて、改めて勧告第 36 号案 を審議し、内部レビューを行った上で最終案としてパブリックレビューに付すとの結論となりました。 本プロジェクトは前述のITP PDAの4 つのドメインのうちシングルウィンドウドメインにおいて進め られます。 — 15 — J AS T P RO 本件を進める上での課題は、既存の勧告第 33 ~ 35 号はもっぱら国内でのシングルウィンドウ の構築を前提としている一方、勧告第 36 号(案)の相互運用性は国を跨るシングルウィンドウ間 だけでなく、貿易関連における行政システム間の相互運用性をも対象として含められており、第 33 ~ 35 号との整合性という視点においても参加専門家の間で必ずしも考え方が一致しているわ けではなく、更に今後 B to GやB to Bを対象とした勧告第 37 号(仮番号)を進める際には、多 様な意見の整理に多くの作業を要するものと思われます。 3.2 PDA #2「サプライチェーン」 3.2.1 担当副議長 Raffelle FANTETTI 氏(イタリア) 3.2.2 関係ドメインとそのコーディネータ ① Finance and Payment Liliana Fratini Passi 氏(イタリア) ② Procurement【調達】 Andre HODEVIK(ノルウェー) Bernard Longhi 氏 欠席 ③サプライチェーン管理 Karina Duvinger 氏(スウェーデン) Edmund Gray 氏(アイルランド) ④ Transport and Logistics Dominique VANKEMMEL 欠席 3.2.3 Finance and Payment ドメイン 3.2.3.1 新規案件 『Remittance Advice 拡張』 プロジェクト 本案件は、我が国 SIPS での金流商流情報連携タスクフォースにおいて作業が進められている金 融 EDI 実証実験に基づき、国連 CEFACTのRemittance Adviceメッセージの拡張を提案するもの です。 ①本件の趣旨は以下のとおりです。 ・取引当事者の入金消込業務を改善する。 ・商取引情報を金融セクターと共有する。 ・日本、アジア、世界の商取引慣行に適合させる。 ②進捗 エディターについては、日本に加えイタリアと英国の専門家が参加します。 また、日本、イタリア、タイがプロジェクト・サポートレターをビューロ議長に送付し、プロジェクト 登録に必要な3カ国によるサポートの基準を達成し、プロジェクトは正式登録されました。 当該プロジェクトは、公開開発手順(ODP)の7 つのステップのうち第 1ステップ(Project Inception)および第 2ステップ(Requirement Gathering)を完了したこととなります。 3.2.3.2 継続案件 『Purchase Order Financing Request』 プロジェクト PO Financeとは、取引先への支払いにおいて取引の完結前に取引の支払いをカバーするための 融資を行うことで、Invoiceをベースにしたファクタリングのバリエーションです。本プロジェクトでは、ビ ジネス要求仕様(BRS) 、要求仕様マッピング(RSM)の策定と三つのメッセージ(① PO Financing Request、② PO Financing Request Technical Report、③PO Financing Request Business Status Report)の設計を行います。 — 16 — J AS T P RO 2015 年後半にPO Financing Request についてドラフトを作成し、 2016 年前半にパブリックレビュー を予定しています。 3.3 PDA #3 「行政」 3.3.1 担当副議長 Tahseen A.Khan 氏(インド) 3.3.2 関係ドメインとそのコーディネータ ①会計・監査 Benoit Marchal 氏(フランス) Eric Cohen 氏(米国) ②税関 リーダ未定 ③環境管理 Norbert PFAFFINGER(欠席) ④電子政府 リーダ未定 3.3.3 電子政府ドメイン 3.3.3.1 法的に保証された国境を跨る重要な電子データ交換を確実に行うための勧告 (Recommendation for ensuring legally significant trusted trans-boundary electronic interaction)』 本件は、ロシアのAleksandr Sazonov 氏が 「行政 PDA」 のプロジェクトとして提案したもので、 EU, デンマーク、ノルウェーの3カ国サポートを得て、ビューロに提出し、承認を得た上で正式なプロ ジェクトとして発足した旨の報告があり、国連 CEFACTホームページにて2014 年 4月16日付で公示 されました。 今次のフォーラムにて以下の進展がありました。 ① Trusted infrastructure servicesの技術的な相互運用性の確認アプローチ Trust service typeの定義はおおむね合意された。 ② Trust qualificationに関するTrust infrastructures services level Qualification gradation が合意された。 ③ 2015 年 11月開催予定の第 26 回フォーラムまでに当該勧告についてパブリックレビューの為の… 最終ドラフトを準備する。 3.4 PDA #4 「産業別特化」 3.4.1 担当副議長 Harm-Jan Van Burg 氏 (オランダ) 3.4.2 関係ドメインとそのコーディネータ ①農水林 Agriculture Frans Van Diepen 氏(オランダ) ②保険 Insurance Andreas SCHULTS 氏(ドイツ) ③旅行・観光 鈴木耀夫氏 (日本) ④エネルギー Utility Cornelis(Kees)Sparreboom 氏(オランダ) 阪口信吾氏(日本) — 17 — J AS T P RO 3.4.3 Agriculture(農業・水産業・食の安全等の分野) ドメイン 3.4.3.1 進行中のプロジェクト ① eCert 動物植物検疫情報 ② Track and Trace of Animal、Plants、Products ③『漁獲トレーサビリティー (Fish Traceability)』 3.4.3.2 新規プロジェクト ①『Fresh Crop Data Exchange Project 生鮮作物流通関連データ交換(eCROP)』 栽培業者、オークション、輸出者、輸入者、リテーラー、証明書発行者、植物検疫所間の情 報連携を意図したものでオランダから提案されました。 ②『分析関連システム(e-Lab III)プロジェクト』 e-Labについては既に標準が開発され、更にそのメンテナンスもCCL 14Aに反映されており、ま た、いくつかのパイロット導入作業も進行しています。 e-Labに関する新たなワーキンググループ(eLabs III)を立ち上げました。 ここでは、食物、飼料の安全性に関して複数の参加者(データ作成者、データ収集者、消費者) 間で異なった用語の使い方等が発生していることから、ビジネス当事者、政府関係者、消費者間 での相互運用性とデータ再利用を促進し、用語の共通化及びコミュニケーション情報の構造化や 公開を目的としています。 3.4.3.3 その他 (1)以下のような実務的なHOW-TOガイドを作成する必要性がビューロに対して提起されました。 ①導入ガイドライン ②ベストプラクティスの例 ③普及のための統一窓口専用のWebsite、プラットフォーム、検索のための索引 等 (2) また、他の組織(IPPC、OIE、CODEX、FAO、EPPO 等)のコードと対比したコードリストのオ ンライン版の発行とメンテナンスの必要性についても提起されました。 3.4.4 保険ドメイン ドメイン・コーディネータのAndreas SCHULTS 氏(ドイツ)から以下の説明がありました。その後、同 氏よりアフリカ地域ラポータ (DIANG 氏(セネガル))及びアジア・太平洋地域ラポータ (石垣氏)に対して、 これまで保険ドメインは欧州の専門家を中心に開発を進めてきたが他の地域の専門家も開発に参画して 欲しい旨のSOUNDING がありました。 3.4.4.1 継続作業中の案件『Project P1007 商業保険のためのコア構成要素 (Submission of Core Components for Commercial Insurance)』 ・Commercial Property Insuranceの228 個のCCの開発が終了しCCL14Bにて公開されました。 ・Commercial Liability Insuranceの50 個のCCの開発が終了しCCL15Aにて公開されました。 ・更に、機械(Machinery)関連保険のCCの開発に着手しました(2015 年 2月)。また商用海上保険 (Commercial Marine Insurance)のCCの開発を2015 年後半に開始する予定です。 — 18 — J AS T P RO 3.4.4.2 継続作業中の案件『Project P1008 Property Claim Handling のためのコア構成要素』 ・Property Claims Handling のCCの開発が終了しました。 これは2010 年に開発されたMotor Claims Handling を拡張したものです。 本件にて本プロジェクトは完了となりました。 ・60 個の新規のCC が国連 CEFACT CCL14Aにて公開されました。 これにて本プロジェクトは完了しました。 3.4.4.3 継続案件『Project P1006 Reimbursement(返済) の分野におけるHealth Insurance の ための building blocks コア構成要素及びモデル』 ・Class model の開発が終了しました。 ・次はGeneral Process model の確定作業を行い、同 Modelをレビューした後、業務要件仕様 (BRS)及び要求仕様マッピング(RSM)に進むことになりました。 3.4.5 旅行・観光 ドメイン 今次フォーラムには同ドメインのメンバーとして鈴木耀夫ドメインコーディネータのみの出席となりました。 昨年 2014 年 11月の第 24 回国連 CEFACTフォーラム以降の活動について以下のとおりオープニング及 びクロージングセッション、更に毎夕刻に開催されるオープンビューロにおけるドメイン毎の詳細活動報告 の場にてビューロ及びフォーラム出席者に対し報告しました。更にフォーラム期間を通じて、欧米、アフリ カ等の専門家にSLH 及び DTIプロジェクトについて直接に説明を行うことで、今後、本プロジェクトへ の参画の可能性についてよい感触が得られたとのことです。 3.4.5.1 継続案件「小規模宿泊施設 (SLH)Small scaled Lodging House 関連プロジェクト・ 実証実験 第 2ステージ」 ①日本、韓国、台湾、タイ、イラン、インドの6ヵ国にて以下のスケジュールにて実証実験第 2ステー ジが予定されています。 ・2015 年 1月~ 3月 システムアーキテクチャー整備(参加各国の役割、費用及び準備) ・2015 年 4月~ 6月 システム開発 ・2015 年 7月~ 9月 国際間のパイロットテスト ・2015 年 10月 プロジェクト結果の評価 ・2015 年 11月 商用システム開発着手 ・2016 年 4月 商用サービス 開始 ② SLHプロジェクトの目的 本プロジェクトの目的は以下のとおりです。 (1)国連 CEFACTのSLHにて開発した標準を更に国際間で活用拡大 (2)グローバル e-CommerceとしてSLHに関する情報交換の実現 (3)各国の言語環境の違いをSLHのグローバルトレードにおいて解決 ③技術的観点 以下を実証実験のスコープに含めています。 (1)オープンソースおよび関連した公開データを前提としたクラウドおよびモバイル技術の利用。 (2)利用料の精算処理およびセキュリティシステムとの調和。 (3)データベースの活用。 — 19 — J AS T P RO ④その他考慮点 (1)参加各国が相互に公平な立場であること。 (2)実験が成功した暁には実際の利用業界の充分な理解を得ること。 (3) ビジネスの方式について実証実験の期間中に充分に議論すること。 (4)各国が 2015 年 9月までに実験完了を目途に最善を尽くすこと。 3.4.5.2 継続作業案件: 『地域観光情報 (DTI: Destination Travel Information Process)』 本プロジェクトの進捗は以下のとおりです。 ①ビジネス要求仕様(BRS)はパブリックレビューが完了。 ②次に要求仕様マッピング(RSM)を開発中。 出来上がり次第パブリックレビューを予定。 — 20 — J AS T P RO 3.4.5.3 今後の新規プロジェクトの予定 以下のような案件について検討中です。 ○レストランメニュー ○各国のローカルのイベント活動 ○クルージング等 3.4.6 エネルギー (Utility) ドメイン 本ドメインの活動分野についての説明は「Domain Utilities deals with administrative/commercial information regarding distribution through a physical grid(electricity, gas water sewage, heat etc.」 です。 3.4.6.1 継続作業中の案件『エネルギー管理システムを活用したデータ再活用 (RDUMS : Reutilization of Data from Utility Management Systems)』 本プロジェクトは阪口氏がプロジェクトリーダとなり、フランス、オランダオーストリアが参画する新規プ ロジェクトにて、エネルギー管理システム(EMS : Energy Management System)が扱う膨大なデー タをビジネス分野に活用するものです。 今回のフォーラムでは、当該プロジェクのビジネス要求仕様(BRS)Ver.02. が正式の内部レビュー 完了版として定められました。その結果、公開開発手順の7 つのステップのうち第 3ステップ(草案起 草)が終了し、第 4ステップ(パブリックレビュー)へと進展することとなりました。 パブリックレビューを実施する為、国連 CEFACTのWeb サイトにレビュー対象のBRSの公開を行 いました(パブリックレビューの終了日は 2015 年 7月21日。)。 当該プロジェクトを3カ国(日本、フランス、オランダ)で進めていることについてBureau からメンバー を拡大するように求められました。このパブリックレビューに対し、プロジェクトリーダより、参加の可能性 がある国連 CEFACTのメンバー国の、韓国、タイ、スウェーデン、ノルウェー、フランス、ドイツに参 加要請を行いました。 3.4.6.2 継続作業中の案件『エネルギー市場緩和に対応したエネルギー関連データ (計測点及び計測) のマスターデータ整合化 (Alignment of Master Data for Metering Point and of Measured Data in the deregulated Energy Market)』 Kees Sparreboom 氏がプロジェクトリーダとなり、作業を進めています。 現在、ebIX® で作成したデータモデルを対象に、国連 CEFACTのコア要素辞書に登録するた めのハーモナイズを実施しました。 注:ebIXとは欧州における電力の自由化の規制に伴い、分業化された電力事業に参画する企業 が、ノード呼ばれる送電間または給電間または送電と給電間で、電力に関する情報交換を簡 易化するための標準化を行っている機関。 — 21 — J AS T P RO 3.5 PDA#5 「手法及び技術」 3.5.1 担当副議長 Anders GRANGARD 氏(スウェーデン) 3.5.2 関係ドメインとそのコーディネータ これまでは本 PDA 傘下にあえてドメインを分けて設定せずに運営してきましたが、新ビューロ議長のも と、以下の4 つのドメインを設けることとなりました。 ① Specification 未定 ② Syntax Gait BOXMAN 氏(オランダ) ③ Library Maintenance Mary Kay BLANTZ 氏(米国) ④ Validation 遠城秀和氏(日本) 3.5.3 継続案件: 『適合性と相互運用性 (Conformance & Interoperability』 プロジェクト プロジェクトリーダ:Jostein Fromyr 氏(ノールウェイ) 本プロジェクトは、国 連 CEFACTの標 準 準 拠のソリューション間の相 互 運 用性を高めるため、 Conformanceの対象及び条件を明確にしようとするものです。このほど、Requirements document on conformance and interoperability of standardsとしてまとめられ、ビューロに報告された後、本 プロジェクトは完了しました。 なお、本プロジェクトのフォローアップとして、新たに次の2つのプロジェクトが提案されました。 (1)全ての標準と技術仕様に「コンフォーマンス要件」を定義する。 (2)国連 CEFACT 外部機関と共同で「コンフォーマンス登録簿」を整備する。 3.5.4 継続案件『ライブラリーの見直し』 プロジェクト 本プロジェクトは、国連 CEFACT が管理する各種ライブラリー (CCL、UN/EDIFACT Directory、 BRS、RSM、XML Schema、Code List 等)のあり方と登録・保守手順の見直しを目的としています。 リーダのChristian Huemer 氏(オーストリア)より各ドメイン・コーディネーターに対し、将来的(2020 年想定)に国連 CEFACT が整備すべき辞書は何かを問うアンケートが行われた結果、これまでどおり、 次の成果物の辞書を保守管理すべきとの回答が圧倒的に多かったとの報告がありました。 CCs BIEs BDAs(現在、辞書は管理されていない) Data Types EDIFACT Messagesおよび Directory XSDs(要請のあるプロジェクトのみ) なお、回答は保守的な感があり、辞書につき他の機関との連携について更に議論が必要と思われます。 3.5.5 Library Maintenanceドメイン ① 2014 年 11月の前回フォーラム以降の実施作業について報告が行われました。 ・UN/EDIFACT D14B, ・CCL D14B(Based on CCTS 2.01(ISO15000-5)) — 22 — J AS T P RO ②今次フォーラムにおいて以下の作業が行われました。 ・UN/EDIFACT D15A 全部で25 件のDMRについて審査が行われ 24 件が承認されました。 この24 件には、我が国の国税庁の要請に基づき、日本から提出したDMR である、 『コードリスト 発番の責任組織(Data element 3055)に法人番号登録機関として国税庁を追加登録する案件』 も含まれます。 ・CCLについては、Agriculture ドメインのAnimal Traceabilityについて検 討が行われました。 … 今後、他の申請についても審議が継続されます。 4. 次回以降の国連 CEFACTフォーラム開催予定 ①第 26 回フォーラム 開催時期: 2015 年 11月2日(月) ~ 6日(金) 開催場所: マルセーユ・フランス ②第 27 回フォーラム 開催時期: 2016 年 3月14日(月) ~ 18日(金) 開催場所: 国連欧州本部 ジュネーブ・スイス 以上 — 23 — J AS T P RO 記事3. 平成26年度JASTPROセミナーにおける講演概要のご紹介 (3) 2月号のJASTPRO 広報誌にて報告しました「平成 26 年度 JASTPROセミナー (平成 27 年 2月5日)」は、 ~アジアとの貿易円滑化に向けた取組み~と題し、以下の三つのテーマで各講師より説明いただきました。 (テーマ1) 「アジア各国とのビジネスインフラ共有に向けて」 (テーマ2) 「日本型通関システムの海外展開について」 (テーマ3) 「我が国港湾 EDIシステムのASEAN 諸国等への展開について」 3月号よりテーマ毎に3 回に分けまして、それぞれのテーマの概要を要約のうえご紹介させて頂いており、 … 今回は最終回で、国土交通省港湾局港湾経済課 課長補佐 名越豪氏の講演となります。 (テーマ3) 「我が国港湾 EDIシステムの ASEAN 諸国等への展開について」 (概要)世界的な港湾関連手続きの電子化・簡素化が進展する中、相手国の経済発展への寄与と、 我が国のインフラ輸出の促進に向け、日本の技術とノウハウを活用した港湾 EDIシステムの ASEAN 諸国等への展開についてご説明する。 我が国港湾 EDIシステムのASEAN 諸国等への展開について、以下の4 点について説明がありました。 まず 1 点目は、我が国港湾 EDIシステムの導入の経緯についてです。従来の港湾関連手続きは、①紙媒 体での書類提出が必要であったこと、②書類の様式は各行政機関によってばらばらであったこと、③手続きが 電子化されても全国一律ではなく、一部のみでの電子化対応であったこと等から、手続きに膨大な時間とコスト を要していました。このような背景を踏まえ、国土交通省港湾局において、全国一律の手続き電子化を図るため、 港湾EDIシステムが導入されるとともに、書類様式の標準化により手続きを簡素化するため、FAL条約(国際 海上交通の簡易化に関する条約)に基づく標準様式を採用する等の対応が取られてきました。なお、この港湾 EDIシステムは、1999 年に運用を開始し、2003 年にはNACCSとの相互接続により、シングルウィンドウ化を実 現しています。現在の港湾 EDIシステムの利用状況を見ると、申請件数ベースでは全体の60%以上がシステ ムにて書類が提出されています。また、港湾 EDIシステムを導入する前までは、書類作成から申請、受理まで に約 14 時間も要していましたが、システム導入後の2005 年時点では約 1 時間に短縮されました。さらには、イ ンターネットが普及したこともあり、我が国では、全国どこからでも港湾 EDIシステムを利用し申請することが可能 となっています。 2 点目は、コンテナ物流の可視化の取組みです。国土交通省港湾局において、2010 年からColins(コリンズ) というサービスが無料で提供されています。本サービスには、主要港に設置された約 60カ所のウェブカメラから 臨港道路の渋滞状況をタイムリーに提供する機能や、コンテナヤードからのコンテナ貨物の搬出可否情報を提 供する機能等が含まれています。また、更なる機能として船舶動静情報の提供があり、コンテナ貨物を積んで いる船舶の概略位置に関する情報が、船舶に搭載されているAIS から得られたデータを基に提供されていま す。現在、このColinsには東京、川崎、横浜、神戸、大阪といった国際戦略港湾 5 港の他、新潟、四日市 等の主要港湾のターミナルが加入しており、約 6,000 人の利用者に活用されています。 — 24 — J AS T P RO 日本の港湾EDIシステムは、シンプルな機能からスタートし、発展 手続の 電子化 - 日本の港湾EDIシステムの構築経緯 本 港湾 テ 構築経緯 - ○日本では、1999年に港湾管理者・港長宛ての手続きを対象とした港湾EDIシステムを運用開始。 ○その後、2003年に、税関手続システム(NACCS)と入国管理手続システム(乗員上陸許可支援システム)と相 互接続し、港湾手続システムのシングルウィンドウ化が実現。 ○(参考)2008年には、港湾EDIシステム、税関手続システム(NACCS)等を統合。 ※港湾手続の申請者にとっては、 どちらのシステムも使い勝手は同じ。 ニーズに合わせたシステム改良のノウハウを日本は蓄積している。 1999年: 1999年 港湾EDIの運用開始 2003年~: 2003年 シングルウィンドウ化 乗員上陸許可支 援システム (入国管理) (参考) 現在のシングルウィンドウ NACCS (税関手続) 相互接続 港湾EDI (港湾手続) 統合NACCS (港湾手続、税関手続、検疫手続、 入国管理、貿易管理、植物検疫、 動物検疫 食品衛生) 動物検疫、食品衛生) 港湾EDI 申請者 物流可視化 への取組 申請者 申請者 11 コンテナ物流情報サービス(Colins)の概要 ○コンテナ物流情報サービス(Colins)は、ターミナルオペレーター、荷主、海貨事業者、運送事業者 ○コンテナ物流情報サ ビス(Colins)は タ ミナルオペレ タ 荷主 海貨事業者 運送事業者 等の関係事業者間で、一元的にコンテナ物流情報を共有化するための会員登録制のウェブサイト型の 情報システム。 ○国土交通省港湾局によりシステム開発及び運営(2010年4月からサービス開始)。 ○多様な関係者が必要な情報をリアルタイムに共有することにより、情報が可視化され物流業務の効率 化、高度化に資する。 ○URLはhttp://www.colins.ne.jp ※Colins:「Container Logistics Information Service」の各語の頭文字 ○混雑ウェブカメラ画像 ○混雑ウ フ カメラ画像 ○搬出可否情報 港頭地区に設置したウェブ カメラ画像をリアルタイムに 提供。 各ターミナルのシステムから提 供される輸入コンテナ搬出可 否情報を表示。 ○船舶動静情報 各ターミナル、港湾管理 者、AISから提供される船 舶動静情報を表示。 ○ゲートオープン時間情報 ターミナルオープン時間など の各タ ミナルのお知らせ掲示 の各ターミナルのお知らせ掲示 板。 ○貨物トラッキング情報 貨物位置情報を表示。 18 3 点目は、ASEAN 諸国における港湾情報化推進施策であります、港湾 EDIシステムの海外展開プロジェク トです。ASEAN 諸国における情報化施策については、ASEAN シングルウィンドウという概念があります。これ は各国に設置されるナショナルシングルウィンドウの連携版といえるものです。ナショナルシングルウィンドウとは、日 本が実現しているように、国内の各行政機関の連携が完全になされた状態のことです。つまり、ASEANシン グルウィンドウは、将来的にASEAN 各国において、港湾関連手続が全ての1 度(ワンストップ)で出来るように なる、あるいは一つの国にデータ送信すると他国との間でデータ通信が可能になる等の大掛かりな構想です。 また、昨年 11月には、 「港湾 EDI 導入のためのガイドライン」が日本とASEAN 諸国との間で承認されました。 これには、今後、港湾 EDIシステムを導入していくASEAN 諸国において留意すべき事項や、システム導入時 — 25 — J AS T P RO の手順、導入された後の運用法等が記載されています。今後のASEAN 諸国における港湾 EDIシステムの 導入には、このガイドラインが基本になっていくものと考えられます。 現在実施されている港湾プロジェクトは、インドネシア、カンボジアなどのASEAN 地域を中心として、基本的 には港湾のインフラ整備がメインです。例えば、 2015 年中の供用開始を予定とし、現在、日本政府の協力により、 ミャンマーのヤンゴン港に新たなコンテナターミナルが建設されています。このプロジェクトは、ヤンゴンの中心街 付近にある現状のターミナルから少しヤンゴン川を下った場所(ティラワ地区)で実施されており、今後急増が見 込まれるヤンゴン都市圏貨物に対応するための港湾インフラ整備です。また、この港湾インフラ整備に加えて、 ミャンマーでは港湾 EDIシステムの導入に向けた準備も進められています。我が国における港湾 EDIシステム 導入の経験や高い技術力を活用し、入出港申請手続機能や物流可視化機能等のミャンマー政府が希望する システムの導入に向けて、現在、調査が進められているところです。さらに、新たなインフラ整備に伴い、将来 的に現地においてコンテナ貨物の取扱業(港運事業)が発生することが見込まれるため、上述のような技術協 力に加え、日本政府において、新たな事業へ進出を希望する日本企業への積極的な後押しがなされているとこ ろです。 ミャンマー政府が希望するシステムの概要 ミャンマー港湾EDIシステム 入出港申請等手続業務 バース割当業務 料金請求業務 統計管理業務 ターミナル作業支援業務 物流可視化業務 ミャンマー港湾公社が希望するシステムのイメージ図 日本の港湾EDIシステムを導入することのメリット: システムを導入することのメリ ト: ○日本の技術力により、システムの高い安定性、高速処理、低コスト運用を実現。 ○過去の国内における港湾EDIシステム構築や他システムとの統合等のノウハウを活用。 ○ミャンマーの実情に応じ、システムのカスタマイズが可能。 ズが 31 最後に北東アジア物流情報サービスネットワーク (NEAL-NET)の取組みについてです。これは、前述の Colinsの海外展開版というイメージです。このNEAL-NET サービスは、中国と韓国にそれぞれ存在するコン テナ物流情報システムが Colinsとデータ連携され、2014 年 8月からサービスが開始されています。本サービス では、日本を出港した船舶が中国や韓国の港に到着したかどうかを把握する船舶動静情報や、当該港でコン テナ貨物が陸揚げされたかどうか、あるいはゲートアウトしたかどうかを把握するコンテナステータス情報が提供 されており、中国や韓国から日本へ輸入される貨物についても同様の情報が提供されています。NEAL-NET サービスでは現在、日中韓の主要港のデータが相互に共有されていますが、今後は、①日中韓における対象 港の拡大、及び②アジアや欧州等への対象国の拡大、について3カ国間で合意されていますので、国土交 通省港湾局においても、それらの実現に向けて引き続き検討を進めていく予定とのことです。 — 26 — J AS T P RO 北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET) 海外展開 ○従来、荷主や物流事業者は港湾に預けた貨物の所在や予定との乖離(早着、遅延)を個別に電話やFAX等で確認してい たため、貨物輸送に係る配車や在庫管理の支障となっていた。 ○このため、日中韓の3カ国は、荷主や物流事業者が各国の主要港におけるコンテナ物流情報をタイムリーかつ効率的に 把握できるようにするため 2010年にコンテナ物流情報の共有を行う「北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL把握できるようにするため、2010年にコンテナ物流情報の共有を行う「北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEALNET)」の構築に合意し、物流情報提供サービス開始に向けた取組を進めてきたところである。 ○本サービスの開始(2014年8月)により、日本、中国、韓国の3カ国間において、①コンテナ船の到着・出発時刻、②コン テナの船積み・船卸し時刻、③コンテナのゲートイン・ゲートアウト時刻に関する情報の取得が可能となった。 ※ NEAL-NET: Northeast Asia Logistics Information Service Network の略称 物流情報の可視化のイメージ NEAL-NETによるコンテナ物流情報提供サービスにより、我が国で新たに可視化が可能となった部分: Colinsにより可視化が進んでいた部分: コンテナ 状態:ゲートイン 時間:x月x日xx:xx 工場 日本の港湾 NEAL-NETのイメージ 状態:船卸し 状態:ゲートアウト 時間:x月x日xx:xx 時間:x月x日xx:xx ○船舶動静情報※ 各ターミナル、港湾管理者、AISか ら提供される船舶動静情報を表示 ら提供される船舶動静情報を表示。 SP-IDC コンテナ物流情報 システム 倉庫 中国・韓国の港湾 ※うち、本サ ※うち、本サービスにて新たに中国及び 新た 中国及び 韓国の情報が可視化された部分 コンテナ物流情報 システム LOG-INK 状態:離岸/着岸 時間:x月x日xx:xx Colinsにて閲覧可能な情報 Colins コンテナ物流情報 システム コンテナ コンテナ船 状態:船積み 時間:x月x日xx:xx ○貨物トラッキング情報※ 貨物位置情報を表示。 販売店 ○CY搬出可否情報 各ターミナルのシステムから提供される 輸入コンテナ搬出可否情報を表示。 輸入コンテナ搬出可否情報を表示 ○混雑ウェブカメラ画像 港頭地区に設置したウェブカメラ画像を リアルタイムに提供。 ○ゲートオープン時間情報 ターミナルオープン時間などの各ターミ ナルのお知らせ掲示板。 (ただし、これらの情報は、当該貨物の荷主、貨物取扱事業者等のみ入手可能。) 34 以上 — 27 — J AS T P RO 記事4. AFACT e-ASIA賞募集へのお願い AFACT(貿易簡易化と電子ビジネスのためのアジア太平洋協議会)の平成 27 年開催国・事務局であるイラ ンより、AFACT 参加各国の代表団事務局(我が国はJASTPRO が担当)に対し、2015 年 e-ASIA 賞の募集 についての案内がありました。 募集要領を下記のとおりご案内致しますので、自薦他薦を問わず、積極的な応募をご検討頂きますようよろしく お願いいたします。 注)AFACTにつきましては弊 JASTPRO Websiteの下記にてご案内しております。 http://www.jastpro.org/un/afact.html e-ASIA 賞はAFACTメンバー諸国・地域における貿易促進、円滑化・簡易化および商取引の電子化促進 についての顕著な功績を顕彰し、併せて開発経験の共有化を図る目的で創設された賞です。2 年毎に実施され ております。 (前前回 2011 年度のe-ASIA 賞は、小島プレス工業㈱様が民間部門の商取引の電子化部門で最優秀賞を、 また、当 JASTPRO が永年の功績を賞して特別名誉賞を受賞しました。) なお、AFACTの登録メンバーは下記 19 ヶ国と準メンバー1団体です。 アフガニスタン、オーストラリア、中華台北、カンボジア、インド、インドネシア、イラン、日本、韓国、 マレーシア、モンゴル、中国、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナム、 サウジアラビア 準メンバー:国連 ESCAP、汎アジア電子商取引委員会(PAA) 本件 e-ASIA 賞の創設の趣旨に賛同され、以下の対象となるカテゴリーにご関心のある方は、2015 年 7月… 31日(金) までに当 JASTPRO 事務局宛ご問い合わせください。 1.賞の対象となるカテゴリー 1.1 貿易の促進、円滑化、および簡易化 ― Trade Facilitation 本賞が定めるTrade Facilitationについては下記注をご参照下さい。 1.2 公共部門(政府機関など)の取引や申請手続き等の電子化 ― Electronic Business in the Public Sector 1.3 民間部門の商取引の電子化 ― Electronic Business in the Private Sector 1.4 Internet など IT 利用の格差解消 -- Bridging Digital Divide 1.5 特別名誉賞 2.応募資格 AFACT 加盟国・地域の代表団長の推薦を受けた企業・組織のプロジェクトであれば、どちらの団体様 でも応募出来ます。 但し、個人の方の応募はご遠慮ください。 — 28 — J AS T P RO 応募対象のプロジェクトは2012 年 5月以降に開始されたもので、既に完了したもの、また今回初めて e-ASIA 賞に応募するものに限られます。 3.選考要領 2015 年 8月15日までに必要書類をイランの事務局に送付することとされています。 その後予備選考を行い、予備選考を通過したプロジェクトについては、その旨をリーダの方にご連絡致します。 予備選考通過の際には、イランのテヘランにて開催される最終選考会にプロジェクトリーダー様(もしくは代 理の方)に出席頂き、プレゼンテーションを行っていただくこととなります。最終選考会の日程は2015 年 11月 下旬から12月初旬の間で今後確定される予定です。最終選考会翌日に当地にて表彰式が取り行われます。 なお、当地へご出張いただく際の費用のうち、渡航費を除く現地 2 泊分の宿泊費用は主催者が負担する こととなっております。 4.その他 詳細はJASTPROホームページの「お知らせ」欄に5月19日付けにて掲載(『2015 e-ASIA Awards Guideline』 (英語原文)) しておりますのでご参照ください。 上記に関するお問い合わせは下記へお願い致します。 一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会 業務部 業務一部長 石垣 充 電 話 03−3555−6084 e-mail: m-ishigaki@jastpro.or.jp 注)e-ASIA 賞が定義する Trade Facilitation 2015 e-ASIA Award guideline が公示した定義によれば下記の様なプロジェクトが上記 1.1のカテゴリ に含まれます: ⅰ) 通商に係わる政府機関の法制度を均衡あるものに改善するもの ⅱ)国際貿易と電子ビジネスを振興するもの ⅲ)下記の諸点についての具体的効果を尺度として評価を行なう事で、情報の可視化を促進するもの: • 通商に関わる政府機関の規制の緩和や簡素化 • 租税(関税)手続きに関わる効率化 • 貿易振興および通商事務の効率化 ⅳ)貿易手続きの簡易化やワンストップサービスを促進する先導的なモデル事業 ⅴ)国連 CEFACT が公開した各種標準および勧告を革新的な形で適用して、 (通商関係の)サービス を向上するもの vi)二国間あるいは多国間の通商上の協調における成果 以上 — 29 — J AS T P RO 記事5. 国連CEFACTからのお知らせ 5-1 21 April 2015: This week in Geneva, the 25th Forum of UN/CEFACT gathered some 130 experts from more than 30 countries, intergovernmental organizations and the private sector in order to finalise a set of technical standards and recommendations which will support implementation of the WTO Trade Facilitation Agreement (WTO TFA). The numerous and comprehensive UN/CEFACT’ s trade facilitation tools have been internationally acknowledged and extensively used for a long time: they keep being openly designed by hundreds of experts in the world in order to complement outputs produced by other key international players -which actively attended the event (like WCO, UNCTAD, ITC, IMO, IATA,etc.)- and ultimately provide support to countries’ efforts both as they plan their commitments under the WTO TFA and as they implement these measures after the TFA has come into force. The CEFACT continues to promote the "Trade Facilitation Implementation Guide", which will be working through an updated version of the website. The 25th Forum also brought some major advances in the fields of transport, agriculture, tourism, supply chain, insurance, procurement and finance. These included: developing a data reference model to facilitate multimodal transport; improving the traceability of animal and animal products by fostering related information exchange; and defining how trade finance can be integrated into current trade facilitation frameworks and practices. All projects and activities are registered in the CEFACT publicly-accessible "Confluence" website.Many experts to UN/ CEFACT were able to participate in two successful parallel events: the Meeting of the Global Facilitation Partnership for Transportation and Trade (GFP) and the UN/LOCODE Conference, respectively. The next Forum will take place in Marseille, France, on 2-6 November 2015. 2015 年 4月21日 今週、ジュネーブにおいて開催されたUN/CEFACT の第 25 回フォーラムは、WTO 貿易円滑化協定 (WTO TFA) のインプリメンテーションをサポートする技術的標準及びレコメンデ―ションのセットを完了する ために、30を超える国、政府間の組織、および民間部門から、約 130 人のエキスパートが集まりました。多 大で、包括的な国連 CEFACT の貿易円滑化ツールは国際的に認められて、長い間広範囲にわたり利用 されてきました。それらは、本イベントに精力的に参加した他の主要な国際組織(例 WCO、UNCTAD、 ITC、IMO、IATA 等) により生成されたアウトプットを補足するために、世界中の何百人ものエキスパートに よりオープンにデザインされています。最終的には各国が WTO TFAに基づいたコミットメントを計画する際、 および TFA が発効した後に彼らがこれらの方策を実施する際の両方の場合に支援を提供します。国連 CEFACTは、ウェブサイトの改訂を通じて「貿易円滑化インプリメンテーションガイド」 を継続的に推進します。 25 回目のフォーラムは、輸送、農業、観光旅行、サプライ・チェーン、保険、調達、およびファイナンスの 分野でいくつかの大きな前進がありました。これらに含まれるものは次のとおりです。 — 30 — J AS T P RO ①マルチモーダル輸送を円滑化するためのデータ参照モデルを開発する。 ②動物および動物性製品に関連する情報交換の促進によりそのトレーサビリティ―を高める。そして、 ③貿易金融が現在の貿易円滑化の枠組と手続きにいかに組み込まれ得るかを定義する。 すべてのプロジェクトと活動状況は、国連 CEFACT の公式ページに登録されています。国連 CEFACT に参加した多くのエキスパートは、並行して開催された次の 2 つのイベントにも参加しました:①運輸と貿易に 関するグローバル円滑化のパートナーシップ UN/LOCODE 会議。次のフォーラムは2015 年 11月2-6日の間 フランスマルセイユにて開催されます。 5-2 30 April 2015: A 60 day public review is open for the recommendation project on Public Private Partnership in Trade Facilitation. This project studies the application of classic Public Private Partnership models to specific trade facilitation measures and specifically the various risks to be considered when thinking of this type of financing. It further proposes a methodology for assessing the implementation of a Public Private Partnership for Trade Facilitation measures. Within the context of the WTO Trade Facilitation Agreement adopted in November 2014, Trade Facilitation is a central aspect for the future of international trade. Financing these projects will increasingly be a challenge, especially for transitional and developing economies. This recommendation project aims to provide a contribution in this sense. The final draft text of the recommendation and the guidelines for public review and the template for all comments are available. Comments should be submitted to the Project Editor, Paloma Bernal Turnes using the Public Review Comment Template. 2015 年 4月30日 貿易円滑化における官民パートナーシップに関するプロジェクトについて60日間のパブリックレビューが公開さ れています。このプロジェクトは古典的な官民パートナーシップのモデルを具体的な貿易円滑化の方策に適 用すること、そして特にこのタイプの資金調達をする時に考えられる種々のリスクについて検討します。更に 貿易円滑化の方策の為の官民パートナーシップの導入を評価する為の方法論を提案します。2014 年 11月 に採択されたWTO 貿易円滑化協定の文脈においては、貿易円滑化は、将来の国際貿易の中での中心 的な話題です。これらのプロジェクトに対するファイナンシングは、特に移行経済圏の国々や開発途上国に とって益々のチャレンジとなります。この勧告プロジェクトは、この観点での貢献を目的としています。パブリッ クレビューのための勧告及びガイドラインの最終的なドラフトテキスト、並びに全てのコメントを記入するテンプ レートは閲覧可能です。コメントはパブリックレビューテンプレートを使って、プロジェクトエディターの Paloma Bernal Turnes 氏まで送付ください。 — 31 — J AS T P RO 5-3 30 April 2015 : A 60 day public review is open for the revised Recommendation No. 4 on National Trade Facilitation Bodies and its Guidelines. The revised Recommendation suggests that governments establish national trade facilitation bodies (NTFBs) as an indispensable component of trade policy formulation embracing the views and opinions of all stakeholders in pursuing agreement, cooperation and collaboration. Due to the multiplicity of Trade Facilitation bodies that have emerged in countries in recent years (e.g. Coordination Committees for Single Window, National Trade and Transport Facilitation Committees, National Logistics Councils, and so on) there is increased demand for a national platform, which will be the main coordinating body for any trade facilitation reforms, thus facilitating effective consultation among public and private sector stakeholders. The Recommendation and guidelines provide a detailed description of the steps for establishing NTFBs, in line with the letter of the WTO Trade Facilitation Agreement adopted in November 2014. The guidelines also include a non-exhaustive list of terms of reference for the NTFB for direct use or customization by countries based on national contexts. The final draft text of the Recommendation and the guidelines for public review, as well as the template for all comments are available in the Public Review section of the project. Comments should be submitted to the Project Editor, Khan Salehin using the Public Review Comment Submission Template. 2015 年 4月30日 勧告第 4 号各国貿易簡易化機関とそのガイドラインの改訂版に関しての 60日のパブリックレビューが公開さ れています。この改訂勧告は、政府が、協定、協力及びコラボレーションにおいてすべてのステークスホル ダーの展望と意見を包含する貿易政策策定の不可欠な要素として各国貿易簡易化機関(NTFBs) を設立 することを示唆しています。近年、各国で多様な形態の貿易簡易化機関(例えば、シングルウインドウの為 の調整委員会、各国国際貿易・輸送円滑化委員会、各国国際ロジスティック協議会等々)、が設立されて きていることから、いかなる貿易円滑化のリフォームをもコーディネートする機関であり、その結果として、官民 ステークホルダーの協議を有効に円滑することとなる、各国のプラットフォームとなる機関への要請が増加して いる。勧告とガイドラインは、2014 年 11月に採択されたWTO 貿易簡易化協定に沿って、NTFB 設立の為 のステップの詳細な説明を提供しています。ガイドラインには、また、各国がそのまま適用するか各国事情に 応じてカスタマイズするための各国貿易円滑化機関についての要件リストを、すべて網羅しているわけでな いが、含めています。全てのコメントを記入するテンプレート並びに、パブリックレビューのための勧告とガイド ラインの最終ドラフトはプロジェクトのパブリックレビューセクションをアクセスして入手可能です。 コメントはパブリックコメントSubmission Templateを使ってパブリックEditor の Khan Salehim 氏に提出くだ さい。 以上 — 32 — J AS T P RO 記事6.『ばいざういんどせいらー』 日本列島船の旅 〔船旅は国境を越えて③本格的クルーズ船への誘い (いざない) 前編〕 ○クルーズ船とは? 『クルーズ』という定義も多々あろうが一番マッチするのは『周遊』ではないだろうか? つまり点から点への単な る移動ではなく、寄港地の旅に上陸して観光する、あるいは船自体が観光地になっている旅なのである。無論、 出発地と下船地が同じこともあれば、FLY & CRUISEといって航空機で現地に赴き (例えばカリブ海等)当地 で1 週間程度のクルーズを楽しみ、そして当地で下船し、また航空機で帰国の途につくというものまである。誰し も憧れるのは『世界一周』であるが、日本船籍船の世界一周では早期割引料金で航海日数 103日、一人 430 万円からの料金設定である(1 室 2 名利用での1 名料金)。 日本では1972 年頃から移民船を改造した船舶にてクルーズを開始したのが始まりとされ、本格的なクルーズ 客船が新造されたのは1989 年(平成元年)になってからである。現在、日本にはクルーズ客船を運航している 会社が 3 社で、そのクルーズ船は3 隻ある。いずれも日本人の趣向にあった船内サービスや料理でもてなしてく れているようである。また、 「日本国籍船」であるからこそ日本各地間での乗船が可能であり、1 泊 2日の神戸〜 横浜ワンナイトクル―ズ等の小さいクルーズを何本も企画することもあり、日本人にとれば比較的乗り易いクルーズ 船であろう。 一方、外国船籍のクルーズ船では一昨年、昨年、今年と「プリンセス・クルーズ社」が大型船「サン・プリンセ ス:77,000トン 2,022 名」、 「ダイヤモンド・プリンセス:116,000トン 2,706 名」の2 隻によって、日本人観光客を対象 として日本の各港に寄港させていた。但し、 「日本国籍船」ではないので日本国内のみの旅客の輸送にあたること は法律上出来ず大抵は日本の港を4~5 港寄港して台湾あるいは韓国、ロシアの港に1 ~ 3 港寄港することとなる。 筆者は昨年、神戸~奄美大島~沖縄~石垣島~花連(台湾) ~神戸と8 泊 9日の航海を「サン・プリンセス」 で味わったので、その概要をご紹介する。 15 階前部からみたデッキの様子 (プールの他、映画も楽しめる) 2 つある 「劇場」のひとつ ○手配 チケットは半年以上まえからの手配であった。先ず、クルーズ船には「デッキプラン」 と呼ばれる「船室配置図」 が必ずあるのでこれを参考にする。インサイド窓なしの部屋などは通常のバルコニー付きの部屋と比べて15,000 円 /日くらい格安であり、部屋を寝る場所のみに考えるのなら寧ろお薦めの部屋である。筆者はバルコニー付き — 33 — J AS T P RO アウトサイドの部屋を予約したが、同じ部屋でも値段的には5,000 円ずつ値差があり8 段階になっている。船室 内の装飾にも、広さにも違いもない。要は船の中心、あるいはレストラン等の繁華街、あるいはエレベーターか ら遠くなればそれだけ料金が安くなるのである。この自分の入る船室選びは骨が折れる準備作業であるが、 「デッ キプラン」を基に十分に検討するのが良いであろう。因みに、この8 泊 9日のクルーズ(無論全食費込み:オプショ ナルツアー、船内チップ、港湾費用別)は、159,000 円(インサイドシャワー、トイレ付き) ~ 702,000 円(オーナー ズスイート)であり、筆者の利用したバルコニー付きアウトサイドで285,000 円であった(いずれも1 室 2 名利用で の1 名料金)。 また、本船は比較的気軽な「プレミアム船」ではあるものの、ご婦人はやはり毎日衣裳を変えての晩餐へのご 出席、これら衣裳を手に持って行ったら大変な事になり、これも事前に専門の業者に頼んで送るのである。船 室に足を踏み入れると乗船前に自宅玄関から出した荷物はちゃんと到着している。その他は乗船手続の際に、 クレジットカードを提出して船内用のカードを作って貰う。このカード1 枚で部屋のキ―から支払まで全てOK.。但 し、念の為 2 枚クレジットカードがあれば良いと思われる。また日本人はチップに不慣れではあるが本船は一人一 泊あたりUS$11.5(内側船室~バルコニー船室) 、US$12(セミスイート客室以上)が自動的に加算され、下船 時にカ―ド精算される仕組みとなっている。因みに客船では、その船の持っているラグジュアリー感や格式感から、 「ラグジュアリー船」、 「プレミアム船」、 「カジュアル船」とランクが付けられている。 ○ 4月29日神戸港で乗船・出港 高まる気分を抑えゲートから初めて「サン・プリンセス」に入る。荷物は、空港と同様に検査機器を通して全 てチェックされる。航空機搭乗の手荷物検査の要領である。酒の持ち込みも「駄目」。持ち込みたい人はワイン を1 本迄持ち込み可能で、更にレストランで「開栓料」がいるらしい。まあ、免税の酒が船内では販売されてい るのでわざわざ内地から税金のかかった酒を持って来る乗客はなかろう。音楽の演奏の歓待を受けて9日間過 ごすキャビンに案内される。アロハデッキ(本船のデッキは5 階~ 12 階、14 階、15 階:ちなみに13 階はない) で11 階に位置する。ツインのベッド、椅子が 2 脚、机、TVにシャワー、トイレ、洗面所、金庫、それにバルコニー がついて全面積は約 17㎡とのことである。 多くの国籍のスタッフが本船では働いており、私の船室担当のルームスチュワードはインド人であり、24 時間い つでもルームサービスOKとのこと。身の回りをただし、衣服をドレッサーに整理して18 時間営業中のバイキング 方式レストラン「ホライゾンコート」で軽く食事をしたかと思うと、もう17 時。本船はブラスバンドの演奏に送られな がらゆっくりと神戸港を奄美大島名瀬港向け出港の最中であった。 アウトサイドバルコニー付きキャビン — 34 — 神戸を出港 J AS T P RO ○初日のディナー 本船での通常の食事は、 「マーキース・ダイニング・ルーム」、 「リージェンシ・ダイニング・ルーム」と2 つのレス トランで2 交代制にて行われる。早餐が 17:30 ~ 遅餐が 19:45 ~である。無論、アルコール類は有料である がメニューにあるものであればいくらチョイスしても良い。 「アラカルト」を選んでいくと必然としてシャケと豆腐と味噌 汁とご飯といった和食に辿りつくことすらある。和食も多く用意しているということである。 このテーブルのメンバー構成は、船会社でも随分と頭を悩まし作成しているようで、私たち2 名の他は40 ~ 50 代のご夫婦 2 組であり、その中の1 名が大阪の開業医でとにかく話題が豊富。楽しい漫才つきのディナータ イムが送れたのは良い思い出である。なお、本船は「プレミアム船」であることから「フォーマル」なドレスコードは 2 回のみであり、いずれも乗船日と下船前日にあたることはない。なぜかというと乗船日であれば衣服の準備が未 だであろうし、下船前夜ならば既に衣服を荷物の中に仕舞っているのでは? との計らいからである。お互いに気 のおけないメンバーだからこそ自分の懐具合と相談して同席の相手に気を使わずして好きなワインやシャンペンを 頼める、これも「プレミアム船」ならではの気軽な楽しみ方であろう。ちなみにワインはリザーブされており、後日異 なるレストランでオーダーしても間違えることなく出されてきたのである。 追記すると船内に数か所ある飲食施設は、原則「無料」である。ケーキを腹一杯食べようが、バイキング方 式のレストラン「ホライゾンコート」で幾皿料理を盛ろうと、 「テラスグリル」でハンバーガーを幾つ食べようが「無料」 である。有料なのはアルコール類と寿司レストラン、それとステーキレストランの席料が 2 名でUS$50 かかるが、 「席料」として徴収されるので料理そのものは一部のアペタイザー (ロブスター、神戸牛のカルパッチョ等)が 1 人 前 US$10 であるのを除き無料である。朝食のルームサービスも無料である。但し、ベランダ付き客室に限定し てオーダーが可能となっているシャンペン付きブレックファーストは2 名分でUS$32、酒類については筆者が好む ジントニック等が大体 US$5 ~ US$6 程度、レストランでのワインはフルボトルでUS$30 程度~、ルームサービス のカティーサ―クのハーフボトルが US$15 であった。 ○ 4月30日 (航海日) 二日目の夜は「フォーマルナイト」であったが、何の事はない、男性はタキシードの諸兄も散見するも大抵はダー クスーツである。女性陣はイブニングドレスかカクテルドレス、またはエレガントなパンツスーツと、とにかく毎日衣裳 をかえて登場する。この日は船長主催のシャンパンレセプションであり、船長によるスタッフの紹介の後、シャンパ ングラスを高く積み上げ、その上からシャンペンを注ぐショーが始まる。船長との記念写真も可能であり、無論そ のシャンペンは乗客にふるまわれるのである。その他には、夜は屋外映画場で映画の公演、ショー、カジノ、ク ラシック音楽、キッチンツアーと左右前後によろけっぱなしで殆どの乗客は部屋には帰って寝るだけであろう。我々 はテーブルチャージUS$50/2 人を支払い「スターリング・ステーキハウス」を予約する。スープから始まり「有料」 のロブスターを2 人前(US$20)頼んだが、オニオングラタンスープとアペタイザー、更に注文したロブスターのボ リュームで圧倒されてしまい、肉は最小の8oz(225グラム)を食するのがやっとであった。付き合わせのフライド ポテトなどの野菜は、各々中皿に一杯盛ってくる。これにお手上げでデザートのメニューは見もせず退散した。 アメリカ船ゆえに肉のボリュームは随分と多いのである。 ○ 5月1日 (奄美大島:名瀬港入出港日) 早朝 6 時 44 分、奄美大島名瀬港に到着する。岸壁には島民が舞踊や音楽で迎えてくれる。 当地は、客船誘致に積極的でボランティアの集まりらしい。神戸からフルスピードで来ると、予定日の前日の — 35 — J AS T P RO 8oz から特大まで自由に選べる 「スターリング・ステーキハウス」 キャプテンズ・ウェルカム・パーティー (高く積まれたシャンパングラスに注目:中央下) 夕方入港になるので減速航海のうえ朝の入港に合わせている。停泊中は殆どの乗船客はバスツアーに出掛け る。バスツアーで特に人気が高かったのは、 「ソテツ・バショウ群生地、西郷南洲謫居跡と大島紬村」、入港後 の7 時半から15 時半までのツアーである。昼食は奄美大島のもてなし料理である「鶏飯(鶏のスープをご飯に かけて食する)。」である。筆者は名瀬港には数回来ており、周囲を散策し珍しい果物を買う程度である。クルー ズ客船が停泊中はその乗客は船に殆ど留まらないことから船内のプールにしろデッキにしろ広大なスペースを十 分に満喫出来ることとなる。また、停泊日の昼食は2 か所のレストランの営業はなく、朝食時もレストランはどちら か一方のレストランしか営業しないのである。主に「ホライゾンコート」あるいはパスタ等の伊料理の店「ヴェルディ ―ズピッツェリア」、 「テラスグリル」、 「インターナショナルカフェ」等で昼食を済ませることになるのであるが、この「ホ ライゾンコート」のメニューの豊富さは眼を見張るものがある。日によって出し汁が変わるラーメンや蕎麦類、いな りずしや巻きずしもある。 「握り」を食したい方は有料ではあるが「海(Kai)寿司」で楽しめば良い。船は16 時 59 分、次の寄港地、沖縄那覇港に向けて現地の方の盛大な見送りに見守られての出港であった。 奄美大島「名瀬港」でのサン・プリンセス 奄美大島「名瀬港」にてボランティアによる見送り ※金額は2014 年のGWに利用したものを記載した ( 続く) — 36 — — 協会ホームページのリンク集のご案内 — http://www.jastpro.org/link/index.html 当協会のホームページのリンク集には、当協会の活動にご興味を持たれる方や日本輸出入者コードの 利用者の方々のご参考として関係諸組織・団体ホームページへのリンクを下記の分類で掲載しております のでご活用下さい。 ▲ 当協会に関係する我国の官公庁・公的機関(独立行政法人を含む) ▲ 輸出入関係手続きに関係する業界団体等 ▲ 輸出入関係手続きに〔国内物流〕関係する情報源と用語集 ▲ 国際空港の公式ページ ▲ 国際貿易港の公式ページ ▲ 貿易簡易化や電子商取引の標準化組織・団体(国内) ▲ 貿易簡易化や電子商取引の標準化組織・団体(海外) ▲ 貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化に関係する国際機関 ▲ その他の組織・機関 JASTPRO 第41巻 第2号 通巻第440号 ・禁無断転載 平成27年5月25日発行 JASTPRO刊15-02 発 行 所 (一財)日本貿易関係手続簡易化協会 東京都中央区八丁堀2丁目29番11号 八重洲第五長岡ビル4階 電 話 03- 3555- 6031 (代) ファクシミリ 03- 3555- 6032 http://www.jastpro.org 編 集 人 山 内 大 二 郎 本誌は再生紙を使用しております。 — JASTPRO広報誌電子版のご案内 — 電子版は、当協会ウェブページのお知らせ欄にてご覧いただけます。 http://www.jastpro.org/topics/index.html 掲載通知をご希望の皆様には、メールにてその旨ご案内申し上げますので、ご希望の方は毎月20日までに… 次の内容を下記の E-mailアドレスにお知らせくださいますようお願いいたします。 ▲ ご所属の組織名称 所属されている部署 申込者氏名 連絡先電話番号 送達をご希望のメールアドレス ▲ ▲ ▲ ▲ 【申込み宛先】 (一財)日本貿易関係手続簡易化協会 業務部 業務二部長 永山 明洋 E-mail address: gyomu_dept@jastpro.or.jp
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